2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月12日

 従って、リセットの目玉は防衛能力と防衛産業の強化を目的とするEUの1500億ユーロのSAFE(Security Action for Europe )調達基金に英国が参加する道を開いたことにある。「共通了解」には、「英国と欧州委員会はSAFEが生み出した相互に利益のある高度な協力の可能性を迅速に探究すべきである」と書かれている。

 SAFEの対象外とされている第三国がSAFEに参加するには、当該国とEUとの間の「安全保障・防衛パートナーシップ」の締結が前提要件とされているが、5月19日、双方はこれに合意し公表している。

英国とEUの今後の関係

 英国としてEUとの関係強化のためにできることは色々あることを今回の合意は示しているように思われる。Brexit派は、「Brexit後の英国はグローバルでEUの規制の桎梏(しっこく)から解放され、貿易と移民を自由に支配出来る」と主張していたが、幻想だった。そのことが広く認識されることが必要である。

 英国民の過半は今やBrexitは間違いだったと考えているというが、国内が分裂している状況は変わらず、EUへの再加盟が現実的な目標となり得るとは考えられない(EUへの復帰はスターマーのアジェンダにはない)。

 EUが英国の復帰を歓迎するかも疑問である。この社説はスターマーの野心が欠乏していると慨嘆しているが、今回の合意を足掛かりにEUとの関係強化に実際的な手段を積み上げることが現実的で望ましい行き方であろう。

1918⇌20XX 歴史は繰り返す▶アマゾン楽天ブックスhonto
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る