2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月19日

 保革対立を激化させるような対決法案の一方的議決や弾劾提訴の乱発等のリスクは切迫している。既に李在明を守るために、大統領に当選したら任期中は刑事裁判を中断するという刑訴法改正案の委員会通過や尹錫悦等捜査の特別検察官設置の議会通過などを強行している。

日本は関係の管理につとめるべき

 日韓関係につき、李在明は従来強硬発言を述べてきたが、昨年末頃から対日融和の姿勢に変わってきた。かつては、「日本は敵性国家」、「核汚染水の放流は太平洋沿岸国に対する戦争を宣言したもの」、また日本の過去の考えは変わっていないとも述べていた。しかし昨年12月頃から、「個人的には日本に対する愛着が非常に深い」と述べ、今年5月の選挙公約では「韓米日協力もしっかりと行う。日本は重要な協力パートナーだ」と述べた。

 6月4日の記者会見では、対日関係につき、「国家間の関係は政策の一貫性が特に重要だ」、「国家間の信頼の問題がある。国家政策を個人的な信念などで一方的に強要したり貫徹したりすることは容易ではない」、「それが現実であることを考慮しなければならない」、「残念ながら過去の歴史問題、独島の領土問題で対立しているが、日本と韓国はさまざまな面で共通の利害関係を持っている」、「経済、安全保障問題、技術、文化交流など双方にとって役に立つものを十分に見つけることができる」、「実用的な観点からお互いに役に立つことは行い、害になることは避け、片方は役に立ち片方はあまり役に立たない関係であれば利害関係を調整しながら適切な線で妥協することができると思う」等と述べた。

 これらの変化は本物だと望みたいが、李在明のこれまでの言動パターンから見ると、時に応じた「実用的」対応である可能性も排除できない。何時変わるとも限らない。日本としては、当面先入観を持たないで、両国関係の管理に努めていくべきだろう。

 李在明にとって、最重要の問題には対米貿易、安保、対中問題が含まれる。安保については、米国に在韓米軍縮小論があるといわれ、韓国がそれを呑まない場合には米軍の完全撤収もあり得るとの見方も一部専門家にある。さらに経済も、成長が鈍り、輸出も停滞している。

 南北関係については、尹錫悦政権よりは対北融和になるだろう。しかし当面金正恩がそれに答えてくるようには思えない。問題山積であり、早速、李在明の手腕が試される。

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