石破茂首相は6月13日の記者団の取材に対し、7月20日に投開票が予定されている第27回参議院議員選挙に際しての自民党の公約に、物価高対策の一環として国民一人あたり2万円、子どもと住民税非課税世帯に1人2万円を加算する現金給付案を盛り込むと表明した。6月11日の党首討論では、「政府として現在検討している事実はない」と否定していたのだから、舌の根も乾かないうちに前言を撤回した形となった。
確かに、「政府」としては検討していないのは事実だったのかもしれないが、都合よく党と政府を使い分ける「詭弁」に国民も冷めた目で見ているようだ。実際、突然の方針転換に、選挙目当ての露骨な「バラマキ」との批判が噴出し、報道各社の世論調査では給付金への反対が過半数を占めている。
石破首相も当てが外れた思いなのではないか。しかし、私たち国民の多くが「選挙目当てのまやかしはもうやめてくれ」と思っていることがうかがい知れる。
ギリシャより悪い日本の財政
5月19日の参議院予算委員会で、石破首相は減税を求める野党議員に対して、「我が国の財政状況は間違いなく、極めてよろしくない。ギリシャよりもよろしくない」と拒否していた。国際通貨基金(IMF)によれば、日本の粗政府債務残高対名目国内総生産(GDP)比は2023年で240%であるのに対して、財政危機に直面した09年当時のギリシャは128.5%だった。確かに日本の方が「ギリシャより財政状況が極めてよろしくない」というのは事実だ。
であるならば、なぜ、給付金というバラマキ策に舵を切ったのか。考えられるのは、選挙対策ということだろう。
さらに、6月6日に示された内閣府「骨太の方針2025」の原案によれば、財政健全化の目標について「今年度(25年度)から来年度(26年度)を通じて可能なかぎり早期の基礎的財政収支の黒字化を目指す」とし、25年度のプライマリーバランス黒字化目標から後退させている。