2025年12月5日(金)

#財政危機と闘います

2025年6月19日

税収の上振れとは

 石破首相は今年2月の衆議院予算員会で、「税収の上振れ分を国民にお戻しする財政状況ではない」と減税を求める野党や国民の声に対して否定的な見解を語っていた。しかし、先にも見た通り、一転現金給付を行うこととし、その財源としては「税収動向などを見極めながら適切に確保し、赤字国債に依存しない」としている。つまり、給付金の財源としては24年度の税収の上振れ分を充てる方針のようだ。

 ところで、税収の上振れとは、一体なにを指すのだろうか。

 税収の上振れとは、財務省の税収見積もりと実績値との差額を指す。税収を含む予算は前年度のクリスマスイブ頃に政府案が策定されるので、その後の経済動向如何で見積もりと実績値はどうしても乖離してしまう。

 図1によれば、上振れるときもあれば下振れるときもあるが、近年は傾向的に大きく上振れていることが確認できる。これは財務省の税収見積もりの精度が近年になって悪化している、もしくは税収を過小に見積もるバイアスが存在しているようにも見える。毎年のように補正予算が策定されているが、そのための財源等とするため、税収を過小に見積もっているのも一つの理由だろう。

 24年度の税収の上振れ額は、まだ決算が確定していないため、財務省「令和6年度租税及び印紙収入補正後予算額概算」によれば、3.8兆円と推計できる。

 財政法は、「各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない」とし、税収の上振れや歳出の使い残しを合わせた剰余金のうち、2分の1以上を国債の償還に充てなければならないが、残りは政策経費として使えるとされている。

 税収の上振れはこれまでも補正予算の財源等として活用されてきたが、財政破綻した当時のギリシャよりも財政状況が悪いのだから、本来であれば、選挙目当ての給付金のバラマキ財源とするのではなく国債の償還財源として税収の上振れ分は使用されるべきだろう。

給付金2万円の根拠

 石破首相によれば、今回の給付金は原則、国民一人当たり2万円とされているが、この根拠は何だろうか。総務省統計局「人口推計」によれば、24年10月1日現在の日本の総人口は1億2380万2000人なので、税収の上振れ3.8兆円を総人口で割れば、単純平均では3.1万円となる。自民党幹部の説明によれば、食費にかかる消費税相当額ということらしい。

 総務省統計局「家計調査」により、総世帯、二人以上世帯、単身世帯の食費にかかる消費税額を試算すると、表1の通りとなる。

 酒・外食以外の食費にかかる消費税は単身世帯では5万円弱となり、給付金2万円では不足が大きいが、平均的な二人以上世帯であれば、ほぼカバーできる金額となっていることが分かる。ただし、この試算に用いたデータは24年時点のものであり、現在進行形の米価の高騰やインフレは反映されていない。したがって、過小評価であることには留意が必要だ。


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