2025年7月16日(水)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年6月18日

 石破茂首相は2040年度の名目国内総生産(GDP)を24年度の617兆円から1000兆円とすることと平均所得を5割以上の増加させることを参院選公約に掲げる考えを示したとのことだが(「石破首相、自民公約で「40年に所得5割以上増」盛り込みへ-参院選」ブルームバーグ2025年6月10日)、マスコミでもネットでもあまり盛り上がっていないようだ。その後の国民1人2万円の現金給付案が話題になって、名目GDP1000兆円は話題から消えてしまったようだ(1人2万円、子どもと住民税非課税世帯の大人にはさらに2万円の上乗せとなった)。誰でも、名目GDPが15年後にどうなっているかより、今の2万円の方に関心があるのだろう。

(つのだよしお/アフロ)

 名目GDPを目標にするのは珍しい。というのは、物価が上がっても名目GDPは上がる訳で、そんなものは意味がないと反論されるからだ。1960年に打ち出した池田勇人内閣の国民所得倍増論も物価上昇の影響を除いた実質GDPを61年度から10年で倍にするというもので(実際には2.437倍になった)、名目GDPの話ではなかった。

 安倍晋三内閣で、名目GDPを600兆円にするという目標が設定されたが、それは成長戦略で実質成長率を上げるという政策パッケージの中で打ち出されたものだ。岸田文雄内閣でも同様に政策パッケージの中で名目GDPを600兆円にするという目標が打ち出された。今回は1000兆円に格上げされたが、政策パッケージはない。


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