2025年12月6日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年6月18日

名目GDP1000兆円は実現できる

 人々の反応は無関心、ないしは実現できないというものだったろうが、筆者はできると思う。なぜなら、名目GDPの年平均成長率は2020~24年度で3.5%だったからだ(正確には3.447%だが3.5%としておく)。

 3.5%の成長が続くと、39年には1000兆円を超える。すなわち、現在のトレンドが続けば、1年前倒しで成長できる。しかし、そのためには条件がある。

 図は、名目GDPの実績と25年度から3.5%で成長した場合を示したものである。この図を見ると、12年以前、それ以降、直近の4年間で大きな変化があることが分かる。名目GDPの年平均成長率は2000~12年度はマイナス0.6%、12~24年度は1.8%(12年前後の12年ずつをとった)、20~24年度では3.5%である。

 異次元緩和の前までは名目GDPの成長率はマイナスであるから、当然、いつになっても1000兆円にはいかない。異次元緩和後の平均成長率は1.8%になったが、これでも1000兆円になるには52年までかかる。1000兆円が実現できるのは異次元緩和を続けた結果、デフレマインドが徐々に弱まって3.5%の名目成長率が実現したからだ。

 名目3.5%の成長とは、物価が2%上昇し、実質GDPが1.5%成長するという姿だ。物価2%とは金融政策の目標である(ここでの物価はGDPデフレータで、金融政策の目標の物価は消費者物価なのでやや異なるが細かい議論には入らない)。過去の実質GDPの年平均成長率は0.6%に過ぎないので、名目GDPの成長率を3.5%にするには物価を2.9%にするか実質GDPの成長率を1.5%にすることが必要となる。

 12年度からコロナショック前の19年度までの実質GDPの年平均成長率は0.9%である。しかも、2度の消費増税の負ショックを受けた後の成長率である。

 したがって、実質GDPの成長率を1.5%になることは難しくても、コロナショックのようなことがなければ、実質GDPが1%で成長するのは十分に可能だろう。ただし、人口減少率がさらに高くなって実質1%成長が難しくなることはありうる。

 物価2%、実質GDP1%の名目GDP3%成長でも40年に990兆円になる。このくらいなら実現できたと評価しても良いだろう。


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