石破茂首相が、国民一人当たり2万円を給付すると表明した。物価対策として7月の参院選の〝目玉〟にするらしい。 選挙前に大人から子どもまでカネを配ることは、「ばらまき」以外に何というべきか。
選挙を前にしての迷走ぶりは与党だけではない。SNSで批判を浴びたことに恐れをなし、党首みずから参院選へ出馬要請した候補をひきずりおろすと思えば、口を極めて政府批判を繰り返しながら、いざとなったら内閣不信任案提出を躊躇する――。
目を覆うばかりの与野党の醜態ぶりは枚挙にいとまがない。このまま、迎える東京都議選、参院選はどんな結果を迎えるのだろう。
「検討したことない」翌々日に表明
石破首相は2万円支給について、「決してばらまきではない。困っている人に重点を置いた給付金だ」(6月13日、首相官邸で記者団に)と強弁した。首相によると、必要財源は3兆円台半ばの巨額にのぼるという。
今回の選挙で過半数割れとなれば、政権交代が現実味を増すため、党内からは参院選に向けて有権者にアピールする公約を求める声があがっていた。財政再建路線維持の立場から、公明党や野党がこぞって求める消費税減税に応じることはできないため給付金方式が残された手段だった。
2万円支給方針を明らかにしたわずか2日前の党首討論で、首相は国民民主党の玉木雄一郎代表から、「現金を配るんですか?」と聞かれ、「政府のなかでそれを検討したことはない。いろいろな選択肢がある。与党から話を聞かなければならない」と述べ、否定とも肯定ともつかぬ表現で答弁を避けた。
その翌々日に給付を表明したのだから、その不誠実さには驚く。与党から要請されたからということかもしれないが、こんな重要な方針をわずか1日で決めたとしたなら恐ろしい。
11日の党首討論で玉木氏は 「税収の上振れ分は自民党、公明党のものではない。国民のものだ」と減税を主張した。減税の是非は措くとして、税収上振れ分が国民のものという主張はまさにそのとおりだろう。