プロ野球の日本シリーズ(日本S)中継と同じ時間帯に、米大リーグ(MLB)、ドジャースの大谷翔平選手らが出場したワールドシリーズ(WS)のダイジェスト番組を放送したフジテレビに対し、取材パスを没収した日本野球機構(NPB)の行為が独占禁止法違反(不公正な取引方法)にあたる恐れがあるとし、公正取引委員会が再発防止を求め、行政処分にあたる初の警告を出した。NPBは「独禁法の解釈や事実認定に重大な誤りがある」と強く反発し、警告の是非を巡っては、新聞各紙に掲載された専門家の中でも判断は割れた。

取材パスの没収については、NPBは今後、同様のケースが起きても行わないことを決めた。今回、NPBが「プロ野球ムラ」の一員として長らく“共存共栄”で球界を盛り上げてきたテレビ局に対し、“裏切り行為”への制裁の意図があったのだろうが、その手段に「取材拒否」は妥当だったのか。
賛否が割れた報道
「公取委の解釈は完全に誤っている。無理やり、取引妨害に仕立て上げられた。警告書を見ても、誰が競争者かも分からない」
サンケイスポーツの6月12日付記事には、NPBで今回の件を担当する植村幸也弁護士の反論コメントが掲載された。読売新聞の同日付朝刊記事でも、独禁法に詳しい小田勇一弁護士の話として「警告を出すならば、他のテレビ局などにも調査を行い、どの程度影響が広がっているかも調べるべきで、それもせずに違反の恐れを認定しているならば警告の根拠に欠ける印象だ」と紹介した。
NPBは公取委による調査段階から違法性を否定してきた。メジャーリーグの放送権は広告代理店が買い取った後、代理店が複数のテレビ局と個別に契約をしており、フジテレビはMLBと直接の契約関係にないと訴える。同時に、フジテレビや、MLBとテレビ局との間に入る広告代理店の取引を妨害する意図も効果もないことは明らかだと主張した。
一方、毎日新聞の記事では、公取委幹部が「NPBの法解釈は形式的な側面を捉えているに過ぎず、本質的な独禁法上の影響について理解が十分でないと言わざるを得ない」と、実質的な取引関係にあったことを指摘する。
同志社大法科大学院の小林渉特別客員教授(経済法)は同じく毎日新聞の同日付朝刊に「日本の放送局がMLBの放送権獲得を躊躇するような事態になれば、取引妨害と言えるだろうし、NPBが野球コンテンツの供給を巡る競争を人為的にゆがめることは問題だ」と処分の妥当性を強調した。