NGO「国境なき記者団」が発表した25年度の「報道の自由度ランキング」で、日本は66位にとどまり、主要7カ国(G7)の中では9年連続最下位となっている。もちろん、これはメディア側の責任も大きい。
テレビ、新聞、ラジオといった伝統的なメディアだけが加盟できる記者クラブ制度の閉鎖性は「仲良しクラブ」と揶揄され、記者はクラブだけに提供される情報を囲い込むことができる一方、日頃から距離が近い取材対象の顔色をうかがい、リークされた情報を他社よりも早く記事にすることが、社内でも評価される文化を生んできた。そして、報道各社は取材対象との関係上、記者同士が互いを牽制するあまり、批判的な記事が書きづらい雰囲気が醸成されてきた。もちろん、全ての記者がそうではないが、記者会見そのものがライブ配信される機会が増えた近年、フリーランスの記者の質疑に圧倒される場面も少なくない。
MLBに〝浸食〟される日本球界に必要なこと
NPBが今回、フジテレビの取材パスを没収した背景にあるのは、メジャーが日本国内の市場へ攻勢をかける現状への危機感の表れとみる。3月には大谷選手らが所属するドジャースと、鈴木誠也選手、今永昇太投手が所属するカブスによる公式戦が東京ドームで行われ、入場券はプラチナ化し、関連グッズなどの売れ行きも好調だった。
毎日新聞が今回の行政処分を報じた6月12日付朝刊記事の隣には、MLBが大谷選手ら12選手のイラストが描かれたマンホールのふたを、各選手ゆかりの場所に設置することを発表した記事が掲載されていた。メジャーはあの手、この手で日本市場を浸食しているのは間違いない。フジテレビがダイジェスト番組を放送したのも、世間に一定のニーズがあったからだ。
NPBからすれば、そんな時代だからこそ、国内メディアと手を携えて球界を盛り上げ、メジャーに対抗していきたい思惑があり、フジテレビのダイジェスト番組の放送が“裏切り”に映ったのだろう。いま、求められているのは、NPBが直面している現実が報じられることで、日本球界の未来について、ファンも取り込んで議論を深めるような情報発信ではないだろうか。そのためには、報道機関に対し、強行的な締め付けを行うのではなく、開かれた取材機会と置かれている現状をつまびらかにする情報の提供だろう。
これはNPBだけにとどまらない。インターネット上に飛び交う偽情報、誤情報とは一線を画し、事実に基づいた報道は、批判的であっても建設的な議論の前提になることがある。昨今の選挙報道などで、世間からの不信感が高まるメディアの取材姿勢が問われているのは違いないが、取材機会そのものが制限される現状は決して好ましくない。
