2025年12月5日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年6月24日

技術革新の成果を享受

 今回のスイッチ2の成功だが、デバイスの世代更新のタイミングが上手く行ったという指摘も可能だろう。スイッチについては、初代が2017年に発売されて成功した後、もう少し早めの世代更新を計画していたとされる。据え置き型と携帯型のハイブリッド化前のWiiの場合、初代のWiiが06年で2代目のWiiUが12年と6年後であったことを考えると、スイッチ2については23年ごろに発売されてもおかしくなかった。

 だが、コロナ禍が間に入ることで、開発と生産が先送りされたようだ。結果的に初代スイッチから考えると、8年後の発売となったわけだが、このタイミングが絶妙であった。まず、コロナ禍は開発や販売には影響を与えたが、肝心のゲーム市場の動向ということでは世界的な「巣ごもり消費」を享受して、ソフトを中心に市場拡大が起こっていた。CNBCの指摘しているブランド戦略も効果はあっただろうが、この「巣ごもり期間」には事実上の利用者、利用時間の増加により市場そのものが静かに拡大して行ったと考えられる。

 さらに、この8年間に技術が進歩した。何よりも半導体のCPU(中央処理装置)とGPU(画像処理装置)が新世代になることで、劇的な性能向上が実現している。集積度モード(ナノ)では1桁違う改善であり、性能だけでなく消費電力や発熱も改善した。

 またディスプレイに関しては、初代製品が途中でOLED(有機)化されたが、今回はさらに画面が拡大しており、本体でのプレイにおける満足度が大きく改善している。その他にも、コントローラ(ジョイコン)の操作感の改善、そして内蔵ストレージも拡大された。

 つまり第2世代への移行に8年を要したことで、技術革新の成果を享受することができたと同時に、その間に市場も拡大していたということが、今回の成功につながったと言えるだろう。

「苦手な」ソフト分野も埋める

 ソフトの充実も進んでいる。一時は日本勢の「死角」と言われたシューティング(射撃)ゲームのジャンルについても、『スプラトゥーン』シリーズ最新作『スプラトゥーン レイダース』をスイッチ2向けとして開発して、この分野を埋めつつある。

『スプラトゥーン』シリーズが任天堂が苦手とするシューティングのジャンルでの人気作品となっている(任天堂HPより)

 また、一連の『マリオ』シリーズの中でも、近年は欧米圏を中心に『マリオカート』が爆発的な人気を博しており、これはこれでドライビング系ゲームのジャンルをも制した格好だ。

 販売政策も成功している。例えばアメリカの場合は、日本とは異なり転売は基本的に自由だが、製品の供給と価格設定がバランスしているために、転売による価格のつり上げは回避できている。また、周辺機器やゲームソフトとのパッケージ販売を噛ませて、本体単体では売り切れでもセットでは売れ行きの足を遅くして、欠品状態を回避する作戦も上手く行っており、背景事情に理解のある消費者からは大きな不満は上がっていない。


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