日本経済の大黒柱になるのか?
そんな中で、任天堂はとにもかくにも「キャラクターとブランド」という、誰にも真似のできない資産を持ち、その資産価値を確実に高めてきた。この経営姿勢が日本企業として極めて珍しい成功事例を生んでいるのは間違いない。
自動車産業については、電気自動車(EV)化と自動運転車(AV)へのシフトの中で、車両の製造販売というビジネススキームそのものが変化しつつ、もしかしたら需要の総量が揺らぐかもしれない。任天堂は既に東証プライムの時価総額においても、日本の国内総生産(GDP)においても日本経済の大黒柱となりつつあると言えるだろう。
ゲーム産業とは、コンピューターソフトの開発力に加えて、ストーリー、テイスト、世界観、デザイン、音楽、効果音、臨場感なども含めた総合芸術であり、巨大な知的付加価値創造の集合体である。日本の場合、そのゲーム産業は常に「サブカルチャー」つまりメインストリームの存在では「ない」とされてきた。
上の世代からは白眼視され、公教育からも無視され、ひたすら個人の自学自習、一種の反骨精神と美学の結晶を組み合わせてここまで来た。それが日本のゲーム産業である。
けれども、若年人口が加速度的に減少する中で、世界の若年人口のニーズを牽引するには、それでは足りない。日本社会としては、異端の才能だけではなく、社会全体から幅広く人材を集め世代から世代へとビジネスとアイディアの灯火をリレーしていかねばならない。
スイッチ2の成功は極めて喜ばしいが、ここから先の任天堂が歩む道は決して平坦ではない。むしろ厳しい荒天が待っているのは間違いない。任天堂の成功に学びつつ、その任天堂の進む道を支えていくために、日本の経済と社会の全てが21世紀の第2四半世紀へという時代に合わせて変わって行かねばならない。
