2025年12月5日(金)

教養としての中東情勢

2025年6月24日

メンツ確保の出口戦略

 窮地に陥ったイランにハメネイ師の暗殺という悪夢も迫っていた。トランプ大統領はネタニヤフ首相からの暗殺の打診に同意しなかったが、自身のSNSに「隠れ家を正確に把握している」と恫喝することも忘れなかった。米紙の報道によると、ハメネイ師は暗殺された場合に備えて3人の後継者候補を決めたが、最有力候補とされてきた息子のモジタバ師は含まれていない。

 こうした中、イランの国家安全保障委員会は米国への報復を決め、ハメネイ師に進言した。「米軍基地を攻撃するが、事前に通告し、損害を最小限にとどめる」といった内容だった。

 辛うじてメンツを立てる象徴的な報復だ。対象としてカタールの「アルウデイド空軍基地」とイラクにある基地が選定された。

 「アルウデイド基地」には米中央軍司令部が置かれ、約1万人が駐屯する中東最大の拠点だ。イラクの基地には約2500人が駐留している。2020年に革命防衛隊のソレイマニ将軍が米軍に暗殺された際、イランは報復として弾道ミサイルを同基地に発射。100人以上を負傷させた。しかし、攻撃に先立ってイラク政府に通告し、米軍には避難の警告がされていた。

 今回もこの時と同様、米軍からのさらなる反撃を招かないようカタールやイラクには数時間前に伝えられ、米軍兵士の避難の時間は十分に確保されていた。トランプ大統領は事前通告について「イランに感謝する」と表明した。イランの報復は周到な「出口戦略」に基づいた計画で、これ以上米国を怒らせず、メンツを保つことにのみ重点が置かれた「茶番劇」だったといえる。

 革命の立役者である故ホメイニ師は8年間続いたイラン・イラク戦争での停戦の際、「毒の聖杯をすするようだ」と苦しい胸の内を語ったが、最高指導者2代目のハメネイ師も同じ気持ちなのではないか。

トランプのおとり作戦

 B2戦略爆撃機を使った米国の電撃攻撃は「おとり作戦」だったことも次第に明らかになってきた。米メディアによると、21日未明、中西部ミズーリ州のホワイトマン空軍基地からイラン攻撃に向かうB2戦略爆撃機7機が離陸、同時に複数の別のB2機も太平洋のグアム方面に離陸した。


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