2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月30日

 報道によれば、中国は米軍のサプライヤーが戦闘機やミサイルシステムに必要とする一部の特殊レアアース磁石の輸出許可を約束していないとされ、他方で米国は、高度な人工知能半導体が軍事に使用されることを懸念し、これらの中国への輸出規制を維持している。米当局者は既存の対中関税について、5月にジュネーブで合意された8月10日の期限を越え、更に90日間延長することを検討しているとも言われている。

 トランプ政権は、レアアースの輸出規制が中国の最大の武器になることを計算に入れていなかったのか。それを予測せず、貿易戦争を始めているのであれば、それこそ問題だ。

トランプは「TACO」

 今回のロンドン交渉も、トランプが慌てて習近平に泣きついたというのが実態のようだ。ビーティは、中国はレアアースを武器として使う準備を2010年(対日レアアース輸出規制の年)頃からしていたと言いたいのだろう。日経記事(6月17日付)によれば、2010年の対日レアアース規制の後、当時世界で日本の独断場だったこの分野の日本企業は中国に進出し、生産に乗り出したが、中国はその過程で技術や経験などを学び、今や世界最大のレアアース、高性能磁石の生産国になったと説明している。

 トランプが段々裸の王様になっているように見える。最近メディアの間で流行している言葉に TACOというのがある。Trump always chickens out(トランプは常に怖気ついて降りる)の頭文字だ。

 法外な関税を掛けるが、何れそれを大幅に下げるというトランプのパターンを揶揄する。市場は段々それに慣れて、敏感な反応をしなくなっているとか、トランプはそれを意識して今後はなかなか下りないのではいかといった冗談交じりの真面目な議論も出ている。FTのラックマンは外交でも TACOがあると書いている。

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