2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月1日

 会議場の近くのホテルでは、中東、中国、東南アジアの代表団が名刺を交換し、投資や合弁事業について話し合っていた。マレーシアの建設会社の幹部は、「中国はあらゆる取引に介入しようとしている。彼らは常にこの地域に関心を示してきたが、今では『米国が協力しないようだから、我々が協力する』と言っている。実際、中国企業を避けるのは難しい」と述べた。

 今回クアラルンプールでまとまった合意の中には、国営企業である中国港湾工程公司がマレーシア北東海岸に港湾と産業拠点を建設するという契約も含まれていた。

 今回の会談には、政治指導者に加え、金融機関をはじめとする多くのビジネス界の重鎮も出席した。中国からは中国銀行や通信大手中興通訊(ZTE)の幹部などの多数が出席した。

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ASEANとGCCの首脳会議

 トランプ政権の関税政策に対抗すべく、中国はASEANや湾岸協力会議(GCC)との間の自由貿易協定網を強化し、輸出先の補完や代替を懸命に模索している。素っ気ない素振りだった日中間の枠組みに対しても急に意欲を示し始めてきている。

 上記の記事が描写する通り、5月最終週に今年のASEAN議長国であるマレーシアがその首都で開催したASEAN首脳会議の折に、GCC首脳との意見交換を開催したが、その機会を上手に捉えて中国は李強首相を派遣し、両国家グループ間の協力枠組みの話し合いの座敷に乗り込んできた。

 ASEANとGCCとの首脳会議は、アジアのイスラム教国であるインドネシアがASEAN議長国であった2023年10月、第1回がサウジアラビアで開催された。その際のGCC側を仕切ったのはムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相であり、ジョコ・ウィドド大統領との間で共同議長を務めた。今回はその第2回目に当たるが、ASEANのもう一つのイスラム教国であるマレーシアが議長国の折に、ASEANの一角で開催されたものである。


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