2025年7月13日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月1日

 フィナンシャル・タイムズ紙の5月29日付け解説記事が、トランプ政権が創り出しつつある世界貿易自由化の「転換点」にあって、東南アジアと中東湾岸諸国の首脳会議がクアラルンプールで開催されたが、その場に中国が乗り出し、三者の首脳声明には輸出に依存する諸国を取り込もうとする中国のナラティブが響いている、と指摘している。要旨は次の通り。

(SOPA Images/gettyimages)

 クアラルンプールで東南アジアと中東の首脳らによる会議に出かけて行った中国の李強首相は、トランプ大統領が世界貿易体制を揺るがしている今こそ、中国はビジネスを展開する上で貢献したいと考えているとのメッセージを発信した。

 李強は、「地政学的な紛争、競争、対立が激化する中で、相互信頼を深めることは長期的な戦略的機会の創出につながる。保護主義と一方的主義が台頭する中であっても、我々が経済開放を続ければ巨大な市場機会を解き放つことができる」と強調した。

 このメッセージは、集まった多くの首脳の心に一定の共鳴を作り出したであろう。これら諸国は米国への貿易依存度が高いために、トランプ大統領が4月に提案した貿易関税による悪影響を強く受ける環境にあるからだ。

 5月28日の夜に米国の裁判所がトランプ大統領の実施した関税引き上げを無効とする判決を下したことで、不確実性は高まっている。マレーシアのリュウ・チン・トン貿易産業副大臣はフィナンシャル・タイムズ紙に対し、「その問題はここに集まる全員の心に重くのしかかっている。世界は今、転換点にある。1945年以来の世界貿易における最大の変化だ。誰もが米国市場の先行きを心配している」と述べた。

 クアラルンプールでの会合は、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と湾岸6カ国の首脳が貿易関係強化のために集まる2度目の会合だった。それに中国の首相は大規模な代表団を率いて初めて参加したものだ。


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