2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月1日

 中国はこの機会に、中国・ASEAN・GCCの3者の第一回を開催したと位置づけ、首脳共同声明までまとめることに成功した。その共同声明は形式的な文書ではなく、実質的内容に富み、中国の機敏な外交的成功を印象付けた。 

「一帯一路」も押し出す

 その共同声明は包括的で、中国の外交方針やナラティブが、そこかしこにちりばめられている。ガザの問題に対しては、国連や国際司法裁判所の勧告的意見などに言及し、イスラエルの対応を手厳しく批判している。貿易の自由化についても、世界貿易機関(WTO)の重要性に言及し、言外にトランプ政権の関税政策を詰問している。

 「一帯一路」の看板も前面に押し出し、その目的を中国・東南アジア・湾岸という地域の連結の基礎だと説明することを忘れない。エネルギーやサプライチェーンの連携、食糧や農業分野の協力、デジタル分野の共同行動などの分野での協力も強調している。イスラム教諸国を多く巻き込むために、ハラル、イスラム金融などへの言及も見逃せない。

 これらはいまだ文書に記述されている方針に過ぎないが、記された方針を繰り返し外交の場面で確認する中国の執拗さを考えると、将来の経済的協議体に発展しないとも限らない。この枠組みは、日本、豪州、インドを排除する様相を呈しており、日米豪印4カ国の枠組みQUAD(クアッド)に対抗する勢いを感じさせる。

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