機能分散もマンション増加政策もどちらも議論すべきだ
昼夜間人口については国勢調査なので20年の数字になるが、東京23区の夜間人口約973万人に対して昼間人口は約1235万人、昼夜間人口比率126.8%となる。この昼間人口は15年には1203万人だったから5年間で30万人以上増えている。
これらの統計から推測できるのは、東京区部に雇用を中心とする活力があり、その吸引力が結果として人口と世帯を増やしているということである。だとすると、その活力を削がないで東京区部の世帯数を増やさない政策またはマンションの増加策を実施しない限りマンション価格の高騰は止まらない。
具体的にいえば各種政府機関、大中小の民間企業、大学や専門学校などのうち、必ずしも東京区部に立地しなくてもよい省庁、業種、学部学科研究科などについての議論を進めて東京多摩や埼玉・神奈川・千葉・茨城など近県あるいはそのほかの各地方に移転させることを奨励する政策が考えられる。これまで長い間、このような議論をするのはタブーとされてきた。旧来型の首都移転論や首都誘致運動を誘発するからだ。しかしだからこそ、首都移転論に飛躍しない形で東京の側から問題提起するべきではないか。
シリコンバレーのアップルやグーグルの本社は、縦型のオフィス構造は従業員どうしのコミュニケーションを妨げ、異分野の専門家どうしの閃きや思いつき、開発ヒントの交換の機会をつくらないとして、広大な平屋建てのスタジアムのような建物となっている。日本でも新たに勃興して大企業となっていく企業は存在する。郊外立地が構想されてもよいのではないか。
たとえばリニア中央新幹線が完成すると、品川から甲府まで約20分で行くと想定される。どう活用するか議論すべきだ。リニア中央新幹線は品川から橋本まで7分程度と予想される。橋本から八王子、町田まで既存の鉄道で10分程度だ。関東とその周辺の都市構造はまだまだ変わる。
圏央道も成田空港のすぐ外側の芝山トンネルが近く供用開始されるだろう。成田空港からの貨物は北関東自動車道経由でなく圏央道・アクアライン経由で川崎・横浜・東京というルートも可能となる。この活用も議論されるべきだ。
もちろん東京区部におけるマンション増加政策も議論されるべきだ。特に区部周辺部を環状に走る大動脈の環状7号線道路の沿道に高度経済成長期に建設された膨大な中小マンション群は今、建替時期を迎えつつある。これら老朽化が進むと手をつけることがますます困難になる。
容積率や高さ制限を見直して建替えプロジェクトを可能にする政策も議論すべきだ。新しく構成される都議会には今までにはない大都市政策についての議論の展開を望みたい。
