米国のリーダーシップは長らくG7に組み込まれて来た。しかし、トランプの登場で、G7は今日のグローバルなガバナンスの多くの課題に対して、目的意識をもって行動することが出来ないように見える。気候変動、金融制度改革、債務問題などの枢要な問題は繰り返し議論されてきたが、トランプ政権に対して提起されることにはならないであろう。
G7に残された道は、(米国が抜けた)G6になることかも知れない。しかし、そうなるためにはG7の諸国に米国抜きで行動する用意がなければならない。
それは可能であるが、首脳達がワシントンと一緒であろうがワシントン抜きであろうが、先手を打って行動出来ると信じることが必要となる。そうでなければ、G7は少なくともこの先3年間、目的もなくさまようことになろう。
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主催国の工夫も露呈した課題
カナナスキス・サミットは、国際秩序を支える規範を無視し、国際協調が眼中にないトランプの再登場を迎え、G7の一体性をどうやって維持するかを試されることとなった。結果としては、分断が明瞭となり将来に暗影を投ずるサミットだったとの印象である。
カーニーの努力がなければ、もっと酷いことになったのであろう。カナダ政府の関係者は「ゴジラがやって来る」と警戒したらしい。
上記の論説にも言及があるが、カナダは色々工夫をしたようである。首脳声明は出さないと予め決めたことは賢明な判断だった思われる。その代わり、全体の合意が見込まれる分野別に文書を作成することにした。しかし、イスラエルとイランの衝突という緊急の問題について、トランプが同意したのは一方的にイスラエル寄りのバランスを欠いた声明だった。
ウクライナの戦争については、ロシアに対する新たな共同制裁を打ち出すことを試みたがトランプの同意を得られなかったらしい。それどころか、トランプはG7が民主主義を共通の価値とするグループであることを忘れているらしく、ロシアを追放したことに疑問を呈し、追放しなければ戦争は起こらなかったと、根拠のないことを述べた。
