モルガンスタンレーの元チーフエコノミストのステファン・ローチが、イスラエル・イラン戦争への米国の参加とトランプ関税が世界経済に二重の衝撃を与え、世界同時不況の危険があると、2025年6月24日付Project Syndicate に投稿している。
中東における新たな戦争の勃発は、関税戦争とともに、世界経済にとって致命的となる。一時的な停戦はあるにせよ、世界同時不況の可能性は急激に高まっている。
世界レベルでの不況は、通常、世界経済の約半分が縮小し、残りの経済は拡大を続ける。国内総生産(GDP)成長率は2~2.5%台まで鈍化し、景気を後退させる。これは 80 年以降の平均である3.3%から0.8~1.3%ポイント低い。
過去45年間、世界経済の失速状態は、2.5~3%の範囲にあり、このゾーンにある時、世界はショックに耐えるために必要な回復力を欠く。これが過去4回の世界同時不況で生じた現象である。
国際通貨基金によると、25年の世界GDP成長率は2.8%まで鈍化すると予想され、正に失速状態ゾーンの中にある。近年の世界不況は単一のショックによるものだったが、今日の世界経済は関税戦争と中東での実際の戦争という2つのショックに見舞われる可能性がある。ダブルショックは世界同時不況の確率を高めた。
最終的なトランプ関税は、10%の一律関税と、対中高関税、そして自動車、鉄鋼、アルミニウム等、米国のレガシー産業を保護するためのより厳しい製品別関税を特徴とするものとなろう。10%という関税率は、米国の過去30年間の平均実効関税率1.9%の約5倍に当たり衝撃的だ。
輸出に依存する中国経済にとっては下振れリスクとなり、米国経済にとっては大きな不確実性となるが、予測可能性に依存する投資と雇用を縮小させる。関税戦争が世界経済に与える潜在的ダメージを過小評価すべきではない。
中東に関しては、戦争がマクロ経済に与える影響は通常原油価格を通じて測定される。トランプが6月23日に停戦を発表した直後、原油価格は戦争に関連した上昇の大部分を取り戻した。が、もし敵対行為が続けば、市場は石油生産、航路の寸断を含むイランの報復可能性を懸念し、エネルギー他、商品価格には大きな上昇リスクが生ずるだろう。結局、米国の6月21日の空爆は、世界に新たな不確実性を加えた。
