2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月7日

 フィナンシャル・タイムズ紙チーフ外交コメンテーターが、6月22日の米国によるイラン攻撃(6月22日)に関し、イランの大戦略は失敗しているが、だからといって米国とイスラエルが成功するとの保証はないと、6月23日付けの論説‘The perils of war with Iran’で指摘している。概要は次の通り。

(Irina Shilnikova/Olena Bartienieva/Ruma Aktar/gettyimages)

 戦争を始めるのはいつでもギャンブルである。イラン、イスラエルそして今や米国がサイコロを振った。

 短期的に見れば、イスラエルのギャンブルは成功したように見える。ネタニヤフ政権は、イランの軍指導者の多くを殺害し、イランの核施設と軍事施設に深刻な損害を与え、さらに、米国を戦闘に引きずり込むことにも成功した。

 トランプ大統領の参戦の決定はイスラエルの成功に依るところが大きい。トランプは勝者であるとみられることを重視している。

 一方、イスラエルに対する「抵抗の枢軸」を率いつつ、表立った対決を避けるというイランのギャンブルは大失敗となった。数十年の間、イランは、核計画を進める一方、ヒズボラ、ハマス、フーシ派といった代理勢力を支援することで地域における利益を増進させてきた。ところが今や、シリアのアサド政権は倒れ、ヒズボラとハマスはイスラエルによって大きな損害を蒙り、イランの体制自体が直接の攻撃を受けている。

 しかし、この戦争の中長期的な帰結は必ずしも明らかではない。

 イランのハメネイ師は難しい選択を迫られている。感情としては反撃したい。一方、トランプ大統領はイランが報復すればさらなる米国の攻撃を招くと警告している。

 体制の生存の観点から、イランの指導部は最低限度の報復を行った上で、外交オプションを目指すことが考えられる。一方、反撃ができなければさらなるイスラエルの攻撃を招きかねない。

 イランは米国によるイラン爆撃について、トランプ支持者の中には再び「終わりのない戦争」に引きずり込まれることを恐れる強い懸念の声があることも理解していよう。イランが中東における米国の権益を攻撃したり、ホルムズ海峡を封鎖することで原油価格を高騰させたりすれば、米国における懸念の声はさらに高まり、米国内の分断は増大するであろう。トランプは移り気であり、国内の政治的圧力があればすぐにも方向転換するかもしれない。


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