6月13日のイスラエルによるイラン攻撃の前までの交渉では、イランはそれを受け入れていなかったが、「12日戦争」を経て、イランの交渉ポジションは変化しているのかどうか。また、イランが国際社会から隠れて核開発を行わないことを確保するためには、国際原子力機関(IAEA)の検証・監視活動がフルに行われることが必要であり、特に、いわゆる「抜き打ち査察」の仕組みを備えた「追加議定書」の実施が求められる。イランは、それらを核交渉で受け入れるだろうか。
第二に、トランプは気にしないであろうが、今回の米国の攻撃で、国際社会の分断がさらに進むことが懸念される。米国に対するグローバル・サウスの評価には深刻な影響があろう。
国際的なルールは無視。自分の判断で他国を攻める。米国の軍事力・経済力は無視できないが、進んで米国に従う理由がますます掘り崩されたこととなるのではないか。
有利な方につくトランプ
第三に、トランプ政権は、今回、極めて機会主義的な対応を取ったが、それが国際関係の不安定要因とならないかが懸念される。今回、トランプ政権の対応には、少なからざる「揺れ」が見られる。
6月13日にイスラエルがイランに攻撃を仕掛けた時点では、「イスラエルの攻撃は容認、一方、米国としては戦闘には加わらずに距離を取る」というのが公式の立場であるはずであった。だが、イスラエルの攻撃が功を奏すると、トランプは立場を変え、6月22日には攻撃に踏み切った。
トランプは、その過程で、戦局で優勢なイスラエルに攻撃を停止することを求めるのは難しいと発言した。同様の発言は、ロシア・ウクライナ戦争でも見られた。
戦局で優勢かどうかが判断基準になるのであれば、「既成事実を作った方が勝ち」とのパーセプションを生む可能性が懸念される。また、ラックマンは「トランプは勝者であるとみられることを重視する」と指摘するが、米国政府としての原則や理念に基づいて決定を下すのではなく、状況に応じて、自らが有利な立場に立つことを判断基準にするのであれば、他国の行動に引っ張られる可能性が懸念される。

