ウォールストリート・ジャーナル紙コラムニストのミードが6月9日付けの論説‘Will Trump Lose India?’で、インド人不法滞在者、インド人留学生の扱いや印パ紛争への米国の対応が米印関係を悪化させていることに警鐘を鳴らしている。要旨は以下の通り。

トランプ政権復帰を歓迎した国の中でインドは最重要だ。しかし、今やインドのトランプ支持者は、間違ったかもしれないと考えている。
インドは貿易では関係悪化を予想していたが、他分野での進展で補われると期待していた。多くのインド人はトランプのロシアへの現実的対応を好ましく思ってきたし、少数派の権利への説教も減ると思っていた。アブラハム合意を歓迎し、トランプがモディのインドを重要視していることを評価し、米印関係深化を期待していた。
代わりに彼らが得たのは数々の驚きだ。米国に不法滞在するインド人追放は予想通りだ。トランプ第一期政権もそうだった。しかし、第二期政権開始後数週間で足かせをされたインド人が軍用機で追放されたことでこの問題は政治問題化し、野党政治家はモディ政権を批判した。
さらにインド人留学生問題。中国人留学生の減少分をインド人が埋めたのは米国の大学には良いニュースだ。昨年は中国人留学生の27万7398人を超える前年から23%増の33万1602人のインド人学生が米大学に入学した。留学生ビザ取得の新規面会設定を止める国務省決定は米国大学、インド政府、留学生とその両親に同様の衝撃を与えた。
さらに、トランプ大統領がiPhone生産を中国からインドに移すApple社の計画を非難するに至り、多くのインド人は米国新政権への熱狂を再検討した。
4月22日のカシミールでのテロ攻撃は全てをより難しくした。インド政府は冷静に対応したが、全政党と世論は米国の反応に怒った。パキスタンはイスラム原理主義の最大の支持者・支援者で、インドは、双方に冷静になれという発言以上のものを米国に期待していた。
トランプがソーシャル・メディアで米国が紛争解決を仲介したと主張したのはインド政府の顔をつぶした。多くのインド人は、インドが重要な勢力としてではなく、印パ対立問題の一部と米国で見られていた過去に戻っていると感じた。
米印関係安定化のためにトランプ政権ができることはある。米国はしばしば両国関係を対中バランスという両国共通の利益に基づくと位置付ける。インドのエリート層も同様だ。しかし、世論には異なる優先事項がある。
第一は経済成長だ。インドの政党は世論から経済成長策を評価されない限り伸びない。貿易、技術協力、移民、留学生の対米アクセスは全てインドのマスコミで大々的に取り上げられ得る。
第二は尊厳だ。インドは大国としての扱いを希望し、世論は如何なる侮辱にも敏感だ。対パキスタン関係でのインドの扱いは機微だ。