2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月2日

 核兵器保有にも関わらず、パキスタンは、経済・政治の失敗で第三列の勢力だ。インドは違う道を辿っておりその成功を認めて欲しいと望んでいる。

 この現実に留意すれば両国の利害が異なっても両国関係を管理する助けになる。不法移民追放でもインドの世論に配慮すべきだ。カシミール紛争から学生ビザ問題まで、政策形成と発表でインド側の感情への配慮が必要だ。

 トランプ政権はより良く対応できるはずだ。世界で最も重要でトランプの復帰を好ましく思っている国を敵対化させるのは利益ではない。重要な国際的パートナーを不必要に苛立たせれば米国は再び偉大にはならない。

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G7サミット参加にも影響

 トランプ政権は、特にインドに対して厳しい対応を取っているわけではない。同政権は、どの国に対しても、この論説が言うような衝動的、国内世論向けの対応を取っているだけであり、インドがそのような対応に対して特別に敏感に反応しており、かつ、その米国に対するマイナスの影響が看過できないということなのだろう。

 裏を返せば、ミードが言うようにトランプ政権がよりよく対応できる可能性は、それほど高くないとも言える。トランプ大統領が衝動的にソーシャル・メディアへの投稿を繰り返す際に、モディ首相、または、そのインドへのインパクトを考えるとはとても思われないからだ。

 インドは、大国であるだけに、その扱いは大変に難しい。今回のカナダ主催のカナナスキス主要7カ国首脳会議(G7サミット)でも、カナダ側からアウトリーチ国として参加招請を受けたのに対し、一時はモディ首相が参加を見送るとの報道がなされた。これは、両国関係が23年にカナダで起きたシーク教指導者の殺害事件をきっかけに冷え込んだことが原因だ。

 シーク教徒による国家「カリスタン」の分離・独立を積極的に提唱していたインド系カナダ人のハルディープ・シン・ニジャール氏(当時45歳)が射殺された事件に関して、当時首相だったカナダのトルドー氏はインド政府の工作員が首謀したと非難し、インド政府はこの主張を「ばかげている」として、関与を否定していた。最終的には、モディ首相は招待受入れを表明し、これが印加関係改善の端緒となったようだ。


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