グローバル・サウスのG7離れ
脱線するが、今回のカナダ主催のG7は、首脳共同宣言発表見送りに見られるように、米国との関係を如何にマネージするかが最も困難で重要な課題となっている。その一方で、余り注目されていないが、アウトリーチ国として招待されたいわゆるグローバル・サウス諸国が招待を断る事態が散見される。
インドは上記の通りだが、インドネシアのプラボウォ大統領は、カナダの招待を断り、シンガポールを訪問した後、こともあろうに、そのままロシアで行われた「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」に出席した。これは、米国が東南アジアから引いていく(または、東南アジア諸国が米国が引いていくとみている)結果として、そのままでは中国の影響力に席巻されることを恐れる各国が、ロシアを含む対外関係ヘッジを試みている事態の一環だろう。
インドネシアの新興国グループBRICS加盟も、中国だけに頼るのではなく、インドにも、ロシアにも、ブラジルにも頼っていくという形で、関係を多極化したいとの考慮だろう。正に、プラボウォの行き先がロシアであることは、そのような背景で理解すべきだろう。
さらに、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)もカナダ行きを断った由だ。ちなみに、これは、MBSはここ数年、ほとんど海外訪問をしておらず、昨年イタリアで開催されたG7サミットへの招待も辞退したという文脈で理解すべきと思われる。
それにしても、折角のG7開催50周年の記念であるにもかかわらずこのような状態になるのは、米国の立ち位置にも影響されたG7の権威の低下もさることながら、カナダが若干なめられているという側面が無い訳ではないだろう。
これは、G7の将来にとってのみならず、グローバル・サウスの重要国の支持獲得が今まで以上に重要となる国際情勢の中で、決して望ましいことではない。来年G7の新たなラウンドがフランスにより開始される。
新たなG7としての50年を踏み出す機会に、G7を舞台にグローバル・サウス主要国との関係を強化する試みを打ち出すべきだと思われる。
