トロント大学のアラン・アレクザンドロフが、トランプ大統領の登場に翻弄されたカナナスキス・サミットの様子を観察し、このままでは、この先少なくとも3年間、主要7カ国(G7)は目的もなくさまようことになるとする論説‘Trump’s disruption in Canada leaves the G7 at a crossroads’をEast Asia Forum(オーストラリア国立大学にあるオピニオン・サイト)に投稿している。要旨は次の通り。
カナナスキス・サミットはもっと酷いことになっていたかも知れない。トランプが、イスラエルとイランの戦争に対処する必要があるとの理由で、一日だけで退席したため、サミットは大体において無傷でカナダの首相カーニーの手に残された。カーニーにとって、トランプの復帰、およびそれに伴い再び提起されることになった世界秩序における米国の役割如何という問題のゆえに、このサミットは非常に敏感なものであった。
カナナスキスでトランプはG8に戻る方が良いと再び示唆した。帰国するに際して彼は記者団に「G7はかつてG8だった。(ロシアが追放されたことは)間違いだったと思う、何故なら、追放されなかったら、今頃戦争はなかったと思う」と述べた。トランプが忘れていることは、G7は常にリベラルな民主主義の価値を増進し民主主義の政策行動を支持する志を同じくする諸国のグループだったということである。
カーニーは二国間およびグループとしての一体性を維持することに最善を尽くした。二国間の関係では、カーニーはカナダが北大西洋条約機構(NATO)の国防費の対国内総生産(GDP)比2%目標を従来は2030年に達成するとしていたが、これを5年前倒しすることを公表した。これはすべての加盟国がこの目標を25年中に達成することを目指すNATO事務総長ルッテを助けることになる。
摩擦を避けるため、カーニーは共同声明を出さないことを予め公表した。トランプが同意しない明瞭なリスクのゆえに、議長声明だけ出すことにした訳である。個別分野別に6つの文書が出された。
しかし、トランプがロシアの加盟を押していることは深い緊張の存在を浮き彫りにする。リベラルな民主主義の価値がG7の中核にあるとすれば、ロシアの再加盟に見込みはない。
韓国や豪州のような国を加えるとの示唆はあるが、トランプ政権との関係で、そのようなイニシアティブは出てきそうにない。グローバル・サウスを加えることについては、既に主要20カ国・地域(G20)がある。
