日本企業、ASEAN企業との協業を
ASEAN企業によるインド、ベトナム両国での積極的な動きは、トランプ関税に直面したASEAN諸国が対外関係でのデリスキングを図る中で鮮明化してきた。ASEAN諸国というと、外国企業の投資の受け手としてのイメージが一般に強いが、2010年代に対外投資が拡大する中で出し手としての側面も強めた。その担い手となったASEAN企業の国際化戦略は、先に述べたように「グローバル型」と「リージョナル型」という2つの主要パターンが観察された。
そして、現在の「多国籍化2.0」では、ベトナムを中心とするASEAN域内、世界一の人口大国となったインドでの投資がそれぞれ目立つように「リージョナル型」がより顕著である。ただし、投資先としての中国の存在感が低下し、それに代わってインドが浮上してきたことが、かつての「リージョナル型」とは異なる点だ。
インドとベトナム両国は、日本企業の間でも注目度が高い。例えば、国際協力銀行が行っている有望投資先に関する製造業を対象とするアンケート調査(2024年)ではインドが1位、ベトナムが2位だ。つまり、日本企業とASEAN企業は、成長が見込める印越両国への期待の大きさを共有している。であるならASEAN企業の現在の「リージョナル型」戦略に日本企業はもっと目を向けるべきだ。ASEAN企業は日本企業が長年経営に注力してきたASEANの主要産業プレーヤーで、日本企業と緊密な関係にあることも多い。日本企業はそんなASEAN企業を広域的な連携パートナーとして捉え、ASEAN域内やインドで協業を推進するという考え方をより強く持つべきであろう。
