タイ企業を中心とするベトナム投資熱の高まり
第2のトレンドは、お膝元のASEAN域内、特にベトナムへの投資熱の高まりだ。特に目目立つのがタイ企業である。タイには素材のサイアム・セメント・グループ、流通のセントラル・グループ、食品・小売りを展開するチャロン・ポカパン(CP)グループなど2010年代にベトナム事業を拡大した有力企業が多いが、これらが更なる投資に動いている。
セントラルは小売部門売上高の約2割を占めるベトナムでショッピング・モール(現在42カ所)や大型スーパーマーケット(同41店舗)をさらに増設するため、地元タイとベトナムの両国で、今後3年間で総額450億バーツ(約2000億円)以上を投じる。CPグループ系の食品大手CPフーズは売上高の約2割を占める最大の海外市場ベトナムで株式上場を計画中だ。さらに工業団地大手のWHAコーポレーションやアマタ・コーポレーションは相次いで新規開発に乗り出している。両社とも既に現地に進出しているが、中国企業をはじめ外資の現地進出が活発化しているため受け皿づくりを加速させている。
タイ中央銀行の統計によると、タイ企業の対ベトナム投資残高は2024年末時点で約138億ドルに達した。ベトナムは国別4位、全体に占めるシェアは約7%だ。金額・シェアともに過去最高水準に上昇している(表②)。
タイ企業にとって最大の投資先は香港(約283億ドル、シェア14%)であるが、香港を経由しベトナムに投資が向かうケースも多く、実際の対ベトナム投資額はもっと大きいであろう。ベトナム市場を巡っては他のASEAN企業も、例えばシンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ・バンク(UOB)が現地子会社の資本金を25%増の10兆ドン(約550億円)に増強、マレーシアのマラヤン・バンキング(メイバンク)も現地の保有資産を2027年までに20億ドルへ倍増する計画など、域内有力銀行の両行が経営拡大に動いている。ほかにもシンガポールの医療大手、トムソン・メディカル・グループが現地の大手病院、フィリピンの大手エネルギー企業、ACENは再生可能エネ事業を手掛ける地元企業をそれぞれ買収するなど様々な案件が浮上している。

