入口の混雑は解消できるか?
石毛氏がどの程度、大阪の夏の暑さを想定しているのか分からないが、近畿地方は観測史上最速で梅雨が明け、来場者の熱中症のリスクが高まることが懸念される。万博協会は「並ばない万博」を打ち出し、オンラインでの難解な入場予約システムを導入しているが、会場の「東ゲート」前には毎朝午前9時の開門前から長蛇の列ができ、日よけもないことから来場者は直射日光にさらされている。
会場には東ゲートと「西ゲート」の2つがあり、地下鉄の大阪メトロ夢洲駅に直結で利便性の高い東ゲートには来場者の7割超が集中する一方、シャトルバスやタクシーの乗り場がある西ゲートは閑散とする状況が続いた。万博協会関係者によると、ゲートの利用状況にここまでの差が出ることは想定外だったという。
開幕前からさまざまな問題をめぐって指摘されてきた万博協会の「甘い想定」の弊害が出ているわけだが、開催による赤字だけは避けたい万博協会は、東ゲートからの入場予約にあふれた人を西ゲートで受け入れ、来場者数の底上げにつなげようと必死だ。
6月に入ってテコ入れ策が続々と発表され、まずはこれまで一般来場者は使えなかった場外の外周道路の歩道について、東ゲートから西ゲートへの片道(約1.6キロメートル)を歩けるようにした。ただ、移動には30分もかかり、万博協会内部からも「暑い中でお年寄りも多い来場者を歩かせて、熱中症になる人が続発するのではないか」と危惧する声が聞かれた。こうしたこともあり7月から有料バスの運行が始まっている。
さらに、夢洲の隣にある人工島・咲洲のアジア太平洋トレードセンター(ATC)と、西ゲート前を結ぶシャトルバスを追加し、大阪メトロ中央線コスモスクエア駅発着路線も新設。この新路線については、開幕当初に1日5000円以上とした基本料金が来場者の不評を買い、利用が低迷していたパーク・アンド・ライドのバスを転用する。
バスが余っていたことは「結果オーライ」であり、当初の計画に問題はなかったのかという疑問は残る。新設のバスはもちろん有料で、会場のシンボル・大屋根リングへのアクセスも良好な東ゲートの圧倒的な利便性を考えると、西ゲートの利用がどれほど伸びるかは未知数だ。
相次ぐ〝水〟に関するトラブル
万博をめぐる問題やトラブルは枚挙にいとまがない。会場では5月以降、蚊に似た羽虫「ユスリカ」が大量に発生し、人間を刺すことはないが来場者に不快感を与えた。海水と淡水が混じる汽水域に生息する「シオユスリカ」で、リング上や照明に集まったり、パビリオンに侵入したりするケースが相次いだ。
「いのち輝く」をテーマとする万博といえど無視はできず、万博協会は5月下旬に駆除も視野に入れた対策本部を設置。発生源が海水の入る「ウォータープラザ」と「つながりの海」だと確認し、殺虫剤メーカーとも連携して対応した。
ユスリカ問題をめぐっては、ウォータープラザで行われる水上ショー「アオと夜の虹のパレード」のジャンパーを着たスタッフが来場者のそばで殺虫スプレーを散布する様子がSNSで拡散し、悪評が立った。万博協会は大量の虫に効果は薄い上、来場者に不快感を与えるなどとして散布しないよう要請した。ユスリカは、対策も実ったのか現在はほぼみられなくなっている。
