2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年7月15日

 トラブルに追い打ちをかけたのが、会場に複数ある水辺でのレジオネラ属菌検出だ。感染すると、2~10日で発熱や筋肉痛などの症状がある「レジオネラ症」を患い、高熱や呼吸困難を伴う重度の肺炎を発症することがある。

 会場中央の「静けさの森」で三日月状に水をためた池「水盤」で、指針値を上回る菌を検出。保健所の検査に関し、万博協会には5月28日夜に水質検査の結果が速報値で知らされた。指針値の20倍の菌が確認され、翌29日の閉場後に排水したが、日中は立ち入り禁止にしていなかった。水盤は多くの子供たちが遊ぶ場所となっていたが、万博協会は「保健所から直ちに使用停止するよう助言がなかった」と釈明している。

「水盤」は、レジオネラ菌の検出で、立ち入り禁止となった

 レジオネラ属菌はウォータープラザでも検出され、開幕当初から人気を集めていた水上ショーが6月4日から中止に追い込まれた。ダイキン工業とともにショーを手がけるサントリーホールディングスの鳥井信吾副会長(万博協会副会長)は会見で、ショー中止について「ご迷惑をおかけしていることについて、大変に反省、申し訳なく思っているが、来場者の安心・安全が第一だ」と強調。その上で、「(一連の問題の)責任となると、エリア的には協会になる」とした。ショーは7月11日から再開している。

どうなる?大屋根リング

 一方、問題やトラブルが続発している万博会場の本丸ともいえるのが大屋根リングだ。万博のシンボルにして、万博協会が「多様でありながら、ひとつ」の会場デザインの理念を表していると誇る建築物で、1周約2キロ、高さ最大約20メートルの規模だけに、「世界最大の木造建築」としてギネス認定されている。

 このリングも、開幕前から万博の計画性のなさや見通しの甘さを感じさせるものだった。そもそも誘致時の計画にはなかった建築物で、2020年末発表の計画に突如盛り込まれた。経緯は公には今もはっきりとせず、誘致から万博を主導してきた関西経済連合会の松本正義会長が「突然、(建築の)専門家が入ってきてそうなった」と違和感を述べるほどだ。

 協会と大阪市の契約では、会場の敷地はパビリオンなどを全て撤去して返すことになっていて、リングも解体する方針が周知されていた。だが、大阪府の吉村知事や一部の政治家が「万博のレガシー(遺産)に」と残置を主張し、万博協会も、維持管理の財源はないとしながらも残すことに賛同。一方で万博にまつわる巨額負担で疲弊する経済界は「残置で発生する追加の費用負担には応じない」との姿勢を示し、利害関係者によるにらみ合いが続いていた。


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