2024年4月25日(木)

研究と本とわたし

2014年5月9日

 私は大学の頃から、戦史に興味を持つようになりました。その理由は、「研究者はとにかく自分の頭で考えなくてはならない」と悟ったこと。では人間はどんなときに自分の頭で考えなければいけないかを考えてみたときに、その最たる例が戦争ではないかと思ったのです。

 戦争では、リーダーが命がけで戦略を練り決断します。つまらない感情に左右されたり、前例にこだわったりすると失敗する。戦史を読むと、そんな事例がいろいろあって、研究とも通じるところが非常に多いのです。

 それから、私がいつも念頭に置いているのは、“高い視点と広い視野をもつ”ことです。自分が今考えなければならない全体は何かをまず明確にする。でも全体だけでは焦点がぼける。そこで焦点を絞ると、今度はそこで見えてくる要素(部分、部品)が全体の中でどのような位置にあり役割を持っているのかが見える。要素が相互作用して全体を演出するのです。

 このことは、なにも自然現象にかぎらず、機械はもちろん人間社会でもおなじことです。「全体・要素・相互作用」が三位一体となって動いていることに変わりはありません。

 だからサイエンスは、常に“全体と部分”とを明確に意識し、それらの相互作用を考えながら進んでいく必要があるわけです。

 そうした“高い視点と広い視野”を身につけるという観点からも、戦争に限らず歴史とか戦略が私が大いに興味ひかれる対象で、愛読書もたくさんあります。

 例えば歴史分野では、『ジョゼフ・フーシェ』(シュテファン・ツヴァイク著、岩波新書)、『世界史概観』(H.G.ウェルズ著、岩波新書)、『史的に見たる科学的宇宙観の変遷』(岩波文庫)など。

 また戦略論の古典である『孫子』(岩波文庫)。そもそも戦略とは、すべての物事の判断の基準となるものです。人生でもそうですし、あるいはプロジェクトを進めるにしても、どういう目的に向かって、どういうスペックで、どういう考え方でものを進めるかの基本ですからね。


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