2025年12月6日(土)

食の「危険」情報の真実

2025年7月22日

 畜産物は生産段階での環境負荷が大きいなど課題も指摘されているが、人間にとっての必須栄養素を吸収されやすい形で豊富に含む重要な栄養源である。人間の健康維持に大きく貢献している。

 安全かつ安定的な畜産物を供給するためには、感染症を予防する必要がある。そこで効果を発揮するのがワクチンや抗菌薬である。

家畜の医薬品・耐性菌への消費者の不安

 安全な家畜の育成には不可欠と言える動物医薬品だが、消費者にとっては不安な部分もあるようだ。消費者庁が発足時から行っている400~500人を対象にした食の意識調査によると、2023年度に食品の安全性の観点から感じる不安が高かったのは、有害微生物、いわゆる健康食品、カビ毒、汚染物質に次いで家畜用抗生物質による薬剤耐性菌が5番目となっている(図1)。16年度からの数字を見ても、60%前後と上位5位以内をキープしている。

 上位に入っている項目の中で、1位の食中毒、3位のカビ毒、6位のアレルゲンを含む食品は、明らかな健康被害が生じるものだが、「家畜用抗生物質による耐性菌」に対して消費者が感じるリスクとはどのようなものだろうか。

 実はこの質問項目について、14年度までは「家畜用抗生物質」となっていたが、16年度から「家畜用抗生物質による薬剤耐性菌」になっている。食品安全委員会によると、より具体的に記述したので設問の意図は同等ということだが、消費者の受け止め方も同等なのだろうか。

 「家畜用抗生物質を使うと耐性菌が生まれて、耐性菌が付着した食肉を食べるかもしれないという不安」「家畜用抗生物質を使い、耐性菌が生まれてしまうと病気の家畜が増えるのではないかという不安」も含まれてくるだろう。そもそも「抗生物質を投与された家畜の食肉は避けたいという気持ち」も考えられる。

 その背景には、家畜用医薬品の有効性・安全性、それを食した人の安全性が法的に守られていることを知らない人が多いことが想像される。うすうす動物医薬品の存在は感じているが、口に入るものに医薬品を使われていたと聞くと気持ちが悪い。そうした気持ちが意識調査の数字から見えてくる。


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