ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンと言えば、「女性の子宮頸がんを防ぐワクチン」とのイメージが強いが、実は海外では男性の接種が当たり前になりつつある。男性の中咽頭がんや肛門がんなどを防ぐ効果が分かってきたからだ。
同ワクチンをめぐっては、今、日本で大きな格差が二つ生まれている。男性の接種率の遅れと女性の接種率の都道府県格差の二つだ。このままだと日本だけが将来、子宮頸がんや中咽頭がんなどが増える国になりそうだ。
日本だけが取り残された男性の接種
自民党のHPVワクチン推進議員連盟(会長・田村憲久・元厚労相)総会が6月17日、東京の参議院会館で開かれた。名の知れた医師やワクチン推進派の市民団体も集まった。ここで田村憲久元厚生労働大臣は次のように熱く述べた。
「日本の女性のワクチン接種率はまだ低いが、男性が接種すれば、男性の中咽頭がんを予防できるだけでなく、女性の子宮頸がんも減らせる効果が期待できる。しかしながら、男性の接種はまだ無料で受けられる定期接種になっていない。このままだと日本だけが世界から取り残される。そして、日本では男性の中咽頭がんが増え、将来、『なぜ、あのとき定期接種にしなかったのか』と言われる可能性が高い」(筆者で要約)
この発言は、いま日本が置かれているHPVワクチン状況の核心を突くものだった。HPVは女性の子宮頸がんの原因になることはよく知られているが、男性の中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、尖圭コンジローマ(性器や肛門周辺にイボができる性感染症)の原因にもなることは意外に知られていない。このことは逆に言えば、男性がHPVワクチンを接種すれば、それらのがんや感染症が予防できることを意味する。
