外国人材問題、〝タブー〟破る
今回の選挙で、論点としてクローズアップされた問題に外国人材の受け入れがあった。
正面切って提起して躍進した参政党は、「管理型外国人政策」を公約、帰化、永住権取得基準の厳格化、外国人による医療保険、生活保護利用条件の明確化などを主張した。ロイター通信は、日本ではいわばタブーだった外国人問題が、箱から取り出されたように自由に議論されるようになった――という日本人学者の分析を引用、同党の主張が支持されことを紹介した。
各党も、それぞれの立場から公約で触れざるをえず、政府が外国人との共生社会実現に向けた事務局を内閣官房に設置したのも、こうした議論に対抗する意図からだった。
米トランプ政権が「アメリカ・ファースト」を掲げて再選を果たし、2月に行われたドイツの総選挙で超右派政党「ドイツのための選択肢」が第2党に躍進した構図との類似性にはおどろく。
外国人問題は、日本人にとっても「給料が上がらなくなる」など、多くに人の心に潜む不満に容易に入り込めるため、長期的な世論分断の火種になる可能性も懸念されよう。実際、「排外主義につながる」(共産党)などという警戒感は根強く、参政党の街頭演説の場に、反対勢力が押しかける騒ぎもみられた。
交渉相手を利する代表の更迭要求
「負」の部分として、もうひとつ指摘しておかなければならないのは、団結力の欠如だ。
トランプ関税をめぐる日米交渉について、首相は「あくまで国益を守る」(7月2日、日本記者クラブでの党首討論)と妥協を排す態度だが、アメリカが日本に新たな関税率を通告した直後、野党からは交渉の稚拙さへの指摘が相次いだ。
「トップ同士の信頼関係が築かれているか疑問だ」(日本維新の会、吉村洋文代表)、「日米交渉は決裂した」(国民民主党、玉木雄一郎代表)などで、立憲民主党の野田佳彦代表は「体制を変えるか、首相が大統領と直談判しなければだめだ」と、交渉を担う赤沢亮正経済再生相の更迭を公然と要求した。
交渉途中での交代がどれほど不利になるか、首相経験者の野田氏が知らぬはずはない。氏自身、「国難」と口にしながら、選挙の宣伝材料として利用しているという批判を浴びてもやむを得ないだろう。
石破政権の手法の妥当性は措き、首相の肩を持つつもりもないが、「なめられてたまるか」(9日、船橋駅前での街頭演説)と首相が呪詛の言葉を吐いたのも、背中から弾が飛んできたような国内批判への悔しさだったかもしれない。
