2025年12月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月29日

 これで北朝鮮は孤立から逃れた。しかし韓国との戦争でロシアが同じことをする保証はない。プーチンは北朝鮮から支援を得るためだけに同盟を結んだのであり、恩を返さないだろう。

 米国の同盟国はトランプ政権を信頼できない。同政権は欧州とアジアの友邦に貿易戦争を仕掛けロシアと和解しようとしている。欧米が同じ側に属し自由民主主義を信じるなら権威主義枢軸国を語る意味があるが、それは不明確だとイタリアの専門家は言う。

 中国は、大西洋同盟の不和と米日および米韓関係の冷却を地政学的計算に加味し一層大胆になるかもしれない。「西側同盟は政治的目的の軍事的手段だが、自由民主主義が弱体化するなら、軍事同盟強化の見通しはない」と清華大学の中国人専門家は言う。

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イラン戦争に対する権威主義枢軸国それぞれの思惑

 上記解説記事は、権威主義枢軸国CRINKsの相互関係に関する分析だ。その論旨には概ね賛成できる。

 イラン戦争で相互協力の限界が露呈したのは確かだが、それだけでこれら諸国の相互協力の今後を過小評価するのは間違いだ。各国が自身の国益の優先順位に従い各国との協力度合いを決めるのは当然のことだ。

 その最たるものが今の米国であり、CRINKs諸国の関係を「他山の石」として、我々米国の同盟国も今後の行動を考える必要がある時代になったのだ。この解説記事から学ぶところは大きい。

 以下、イランのいわゆる12日戦争におけるCRINKs諸国の関係について見ておきたい。まずロシアとイランとの関係。アラグチ・イラン外相が訪露しプーチン大統領と会談したのは6月23日で、6月21日の米国のイラン爆撃の翌々日だ。23日のカタールにおける米軍基地予告爆撃の翌日で、会談翌日の24日には、イランの停戦受入が発表されている。

 ウクライナ戦争でロシアを支援しているとの自負があるイランは、ロシアに対して、今後明らかに不足する防空システムやミサイル・弾薬の供給を要請しただろう。ロシア側がこれを受け入れた形跡はない。その理由は、やはり米国だろう。

 プーチンはトランプとあからさまに対立したくなかったのでありイランは見捨てられたのだ。これをイランは忘れないだろう。国境を接する大国間関係にありがちなイランとロシアとの歴史的緊張関係も念頭に置く必要がある。


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