2025年12月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月29日

 次いで、イランと中国との関係。イランにとって中国は原油150万バレル(B/D)の最大の輸出先だが、中国にとってイラン産原油は(輸入の)6%に過ぎないのに対してサウジ産12%、イラク産10%、クウェート産5%、アラブ首長国連邦(UAE)産3%(JOGMEC資料)と、湾岸アラブ産油国の方が圧倒的に多い。損得勘定から言うと、中国にはイランに肩入れしてアラブ産油国との関係を緊張させる理由がない。

 イランは中国を頼りにし過ぎた。言い方は悪いが、ロシアと同様に米国の顔色をうかがう中国からは、「属国」としても受け入れられないかもしれない。中国はペルシャ湾地域に原油輸入の約50%を依存しているが、この割合は過去20年間で4倍増している。

 中国は、湾岸の緊張激化は決して望まないし、全方位外交でするしかないのである。パレスチナ問題への対応を見ても同様だ。

リスクをとり得る金正恩

 次いで北朝鮮だが、これまでイランとの関係は必ずしも深くなかったが、恐らくイランが核兵器を保有するためには、一番困難な爆縮技術を既存の核兵器国から入手する必要がある。米国から目の敵にされるリスクを冒してまでこれをやる用意は露中には無く、やるとしたら北朝鮮だろう。

 北朝鮮の見返りは、石油とドローン技術で、悪い取引ではない。ロシアの後ろ盾を得て金正恩は自信を深めており、このリスクを取る用意があると思われる。

 ルッテNATO事務総長も指摘する、台湾有事の際のロシア・北朝鮮・イランの陽動作戦の可能性は、日本にとっても深刻な脅威となりうる。上記記事によれば、ロシアの専門家はロシアの介入に懐疑的だというが、決して過小評価してはならない。

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