EUより電気料金が安い地域からの国際競争に曝される化学、製紙、金属などエネルギー・電力多消費企業に対し、政府が支援を行うことは認められるが、真に必要な部分のみに限定される。付加価値額の20%以上を電力コストが占める企業、取引の4%以上がEU外の企業に対し、政府が負担額の減額を行うことは可能だ。
再エネの発電量増加に伴い、EUでは稼働率が低下したガス火力発電の閉鎖が続いているが、設備に対し料金が支払われる容量市場を各国が創設することが認められる。ただし、設備の不足を補うために蓄電、他国との連係、需要削減などの方策を導入することも要求される。
産業の競争力のために大規模電源に回帰するEU
電気料金の上昇に結び付く再エネ導入のスピードを減速し、容量市場を導入するドイツとEUの動きは、分散型電源から大規模電源に回帰する意図ともみえる。再エネの導入は発電コストの上昇だけでなく、バックアップ発電設備の稼働率低迷と送電線の整備費用による、さらなるコストアップを引き起こすことから、当面の料金の上昇を抑制するには、大規模電源を活用すべきとの判断だろう。
EUの製造業のGDPに占める比率を現在の16%から20年に20%に引き上げる目標を持つEU委員会にとっては、温暖化対策、エネルギー安全保障などの観点から再エネ導入政策は重要だが、電気料金上昇による産業の競争力喪失への対策はさらに重要な課題ということだ。特にシェールガス革命によりエネルギーコストが極めて低くなっている米国との競争力の乖離が問題と多くのEU諸国は考えている。
日本も産業の競争力を維持・強化する政策を
EUで再エネ導入政策の見直しが続く中、日本は固定価格買い取り制度(FIT)に基づく導入政策を続ける世界でも珍しい国になっている。しかも、原子力発電所の停止により電気料金は上昇する一方だ。
エネルギー・電力コストの上昇は産業の競争力に大きな影響を与えることを考え、再エネ政策を含め早急にエネルギー・競争戦略を見直す必要があるだろう。
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