現在、最新艦艇は重点的に南海艦隊に配備されるようになった。海南島の榆林海軍基地の建設状況等から、空母は南海艦隊で運用されると分析されているが、空母戦闘群を形成すると思われる駆逐艦及びフリゲートの配備も進む。最新の性能向上型を優先して南海艦隊に配備しているのだ。そして、最新型の戦略原潜や攻撃型原潜も海南島の基地に配備された。中国海軍が指向する方向が南へと変化してきたのだ。
「陸と海の新シルクロード」
しかし、中国の視線は南シナ海だけではなく、さらに西を向く。「西進」戦略だ。中国の空母戦闘群は米海軍の空母戦闘群と海戦を行うためのものだとは思えない。中国の空母戦闘群構築が性急すぎるからだ。作戦を理解しなければ艦艇はデザインできない。しかし、訓練空母が就役してから1年半、中国は空母の運用さえ確立していないだろう。それにもかかわらず中国が空母戦闘群の構築を急ぐのは、別に目的があるということだ。
中国の経済活動に不可欠なエネルギー資源は、今や多くを輸入に頼っている。中国は、海上輸送が米国によって妨害されるのを非常に恐れている。チョークポイントであるマラッカ海峡を通峡しない代替輸送ルートを建設する一方で、南シナ海の海上交通は完全に管理したいと考えるだろう。習近平主席が述べる「陸と海の新シルクロード」である。
しかし、中東を経てヨーロッパへと延びる新シルクロードを活性化するために邪魔になるのもまた米国だ。中国は、米国だけが世界中に軍事プレゼンスを示せる現状に危機感を抱いている。米国が自国に有利な地域情勢を作り出し、中国の権益を脅かすことを恐れるのだ。中国が空母戦闘群構築を急ぐ理由はここにある。米国に対抗する軍事プレゼンスを示し、中国に有利な地域情勢を作り出すためなのだ。
地域に影響を及ぼすためにはその地域で軍事プレゼンスを示すだけでは十分ではない。米国に邪魔をさせないことが重要だ。そのために中国が力を注ぎ続けているのが核抑止力である。中国は、2013年12月にも、新型ICBM(大陸間弾道弾)であるDF-41の発射試験を成功させている。
米国が懸念を示すのは、中国の意図だ。中国が米国と対等の抑止力を有し、世界中の地域に軍事プレゼンスを示せるようになったとしたら、中国はどのような行動をとるのか? 米国が不安を抱くのはこの点である。