2025年12月6日(土)

家庭医の日常

2025年8月31日

 家庭医の診療ではどんな頭痛もやってくるので、数は多くないが、二次性頭痛の確定診断と治療のためただちに専門医療施設へ紹介が必要になることもある。

 他方、頭痛はあるが安定していて、神経学的診察所見が正常で、その他の「レッドフラッグ」所見がない場合は、通常、画像診断は必要ない。引き続き必要な問診と診察を付け加えて、一次性頭痛のどれであるかの診断を進めていく。

 さらに家庭医は、起きている頭痛についての患者の解釈、期待または恐れていること、どんな感情でいるか、そして人生への影響について傾聴し、患者の健康観と患者を取り巻く様々な要素(コンテクスト)を考慮した上で、その頭痛がもつ患者にとっての意味を理解しようと努める。

頭痛ダイアリー

 家庭医の一次性頭痛の診療では「頭痛ダイアリー(日記)」が役に立つ。英国の国立医療技術評価機構(NICE)の『頭痛の診断とマネジメントについての診療ガイドライン』でも、一次性頭痛の診断とマネジメントに「頭痛ダイアリー」の使用を考慮することが推奨されている。

 「頭痛ダイアリー」とは、ある期間(1〜3カ月のことが多い)での頭痛の発生状況を患者の協力で記録してもらうものだ。そこでは頭痛が起こった日、時間帯、頭痛の強さ、性状、前兆、誘因、随伴症状、日常生活への影響度、対処法(使用した薬剤やサプリメントは市販のものも含めて)、その効果、仕事や外出などの出来事、女性であれば生理期間、天気、睡眠、頭痛のエピソードごとの感情、その他気のついたことなどを記入してもらう。

日本頭痛学会による「頭痛ダイアリー」のフォーマットの記載例 写真を拡大

 私はまず患者に自由な形式で書いてもらうことを好むが、既製のフォーマットを利用したい場合には、インターネットでいくつか入手できる。日本頭痛学会のもの(図)もある。

 S.S.さんの診療でも、今まで記録された「頭痛ダイアリー」を振り返ることで、鎮痛薬を服用する頻度が増えるとかえって頭痛が増えること、出張や設計コンペへの応募や設計プランのプレゼンが続くと頭痛が悪くなること、睡眠不足で頭痛からの回復が遅れること、鎮痛薬を服用しなくてもおさまる頭痛があること、現在大学院で修士論文を書いている妻の体調もS.S.さんの頭痛に影響していること、そして強い頭痛に対してS.S.さんが抱く恐怖などが明らかになった。

薬剤の使用過多による頭痛

 S.S.さんは「鎮痛薬を服用する頻度が増えるとかえって頭痛が増える」ことに驚いていたが、これはICHD-3にある「薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache; MOH)」の傾向を示している。


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