THCは所持しているだけで罪に
THCにもCBDと同じように鎮痛や睡眠導入などの効果はある。しかし、精神作用でいわゆるハイになり、慢性的・高用量の使用で依存症や精神障害となるリスクなどから、改正法で厳しく規制されることとなった。
実は改正前の大麻取締法は、大麻草の「部位」が規制対象で、違法となるのは大麻の花や葉などを所持していた場合だった。このため、改正前はCBD製品にTHCが含まれていても、「合法の部位(茎など)を利用した」といえば違法とみなされないこともあった。改正法は、こうしたあいまいさを排除し、THCの含有量によって合法・違法を判断することにした。
法改正でTHCは法的に「麻薬」となり、規制値超の含有製品は意図の有無にかかわらず、所持しているだけで「麻薬所持罪」という重大な刑事罰の対象となる。不正な所持に対する罰則は、従来の5年以下の懲役から7年以下の懲役(拘禁刑)に引き上げられた。また、改正前にはなかった「使用罪」が導入され、尿検査などでTHCが検出されれば、物証である大麻製品が押収されなくても立件される可能性が高くなった。
日本と欧米で異なるTHC限度値
今回の事案で浮き彫りになったのは、日本と欧米各国でTHCの限度値が異なる点だ。限度値の違いにより、海外で購入したCBD製品を日本に持ち込んだとき、意図せずに法律違反に問われるかもしれない。
例えば、アメリカでCBD製品の販売が認められている州では、THC濃度が0.3%(3000ppm)以下のCBD製品がスーパーマーケットやドラッグストアなどでごく普通に販売されている。
しかし、日本のTHC濃度の基準は0.001%(10ppm)以下とはるかに厳しい。これはサプリやオイルの基準で、グミやベイプリキッドの基準はさらに厳しい0.0001%(1ppm)。これらの数値は、製品からTHCが検出されない「非検出(ND)」を求めているに等しい。
つまり、アメリカで売られているTHC濃度0.3%の製品は、日本の基準では完全に違法な「麻薬」となる。海外で「THCフリー(THCが入っていない)」や「合法」と表示されていても、それはその国・地域の基準をクリアしているに過ぎず、日本の法律に照らせば限度値超のTHCが混入している可能性がある。実際、これまでにも「THCフリー」と表示された海外の製品から、日本では違法レベルのTHCが検出された事例が多数報告されている。
