しかし、ロシアの地方では、そのような考え方を後押ししようという動きが鮮明になっている。
ロシア中南部チェリャビンスク州では、24歳以下の学生の両親に第一子が生まれた際に、100万ルーブル(約180万円)を付与する制度を導入した。両親の収入規模は考慮されないといい、いかに当局が学生の出産を促そうとしているかが分かる。
妊娠中絶には罰則
一方で、ロシアでは妊娠中絶に対しては、厳しい規制が相次ぎ導入されている。
ロシアメディアの報道によれば、今年6月までに、すでに20以上の州(ロシアが一方的にウクライナから併合したクリミア半島などを含む)で中絶を促進する行為に罰金が科される制度が導入された。法人への罰金額は最大で50万ルーブル(約90万円)というが、金額以上に医療機関への脅しの意味合いが伺える。
ロシアで公式には、妊娠12週間までの中絶を容認しているが、その期間の短縮をめぐる議論が過熱している。政府も事実上、人口妊娠中絶の規制を強化しており、昨年9月には経口中絶薬の流通を制限する法律を施行した。それらの流れから鮮明になる、当局の意向を踏まえるように、地方の病院では中絶手術を行わなくなる動きが広がっている。
プーチン大統領は昨年11月、子どもを持たない生活「チャイルドフリー」をネットやメディア、広告などを通じて宣伝することを禁止する法律に署名した。罰金額は最大500万ルーブル(約900万円)になる。
プーチン政権は「伝統的な家族の価値観」を主張し、女性が家庭において多くの子供を持つことを推奨する。政権と密接な関係にあるロシア正教会のキリル総主教は、中絶の全面的な禁止を求めており、政治だけでなく宗教面からも、そのような社会の流れが生み出される仕組みがある。
加速する人口減少
ロシアの人口は1994年に1億4900万人でピークを迎え、その後は減少と増大を繰り返しながら徐々に減り、2021年時点で1億4500万人になった。減少幅が抑えられたのは、移民の受け入れによる社会的な増加が自然減を相殺したことが背景にある。ただ、減少傾向は今後加速すると予想され、2050年には1割減の約1億3000万人、今世紀末にはさらに減少すると予想されている。
