センターに通う帰還兵の一人、グレイブ・ベニアさん(29歳)は理学療法士の管理のもと、リハビリの一環としてマシーンを使い左腕の筋力をつけるトレーニングをしていた。前線での任務中に右腕と左足を失い、電動車椅子で生活している。
ITエンジニアとして働いていたが、ロシアによる侵攻を目の当たりにし2023年に「祖国を守るため」と軍へ志願した。空挺部隊に配属され、イギリスで1カ月間訓練した後、激戦地の一つであるドネツク州に送られた。
同年12月20日の夜、最前線に水などの物資を届ける兵站活動中にロシアの自爆ドローンに発見され、身を隠す場所がなくそのまま被弾。一緒にいた同僚3人は即死だった。爆発の影響で視界もはっきりせず、身動き出来ないまま10時間後にようやく友軍に救出され奇跡的に一命を取り留めた。
「後悔はしていない。また同じ選択をする」。インプラントを埋め込むために今年に入り既に2回手術し、将来は自力歩行ができる見込みだ。
センターには、英国やスウェーデンなどヨーロッパで開発された最先端技術が搭載された義肢が供給される。チタンインプラントを骨に埋め込み結合させることで、脳からの信号を神経や筋肉と連動させて動く手足は体への負担が少なく、スムーズな動きが可能だ。また義肢の安定性や機能回復にも重要な役割を果たし、負傷兵にとってストレスが少ないことが特徴である。
交流を促し心のケアも
もう一人の帰還兵、イーゴルさん(51歳)はインテリア関係の仕事に就いていたが、国を守るため22年に志願兵として従軍した。ドネツク州の前線で地雷により左腕を負傷し、6時間後に救出されキーウの病院に搬送された。
「また部隊に復帰して前線に戻りたい」と戦う気持ちはなくなっていない。リハビリセンターに通う帰還兵の表情は一様に明るく社交的で、過酷なリハビリにも耐える姿からは必ず社会復帰するという強い意思が感じられた。
