2025年12月5日(金)

WEDGE REPORT

2025年9月18日

帰還兵と市民の交流

 最後にこのリハビリセンターのもう一つの特筆すべき点を紹介したい。センターはリハビリに参加した帰還兵が働く場所として、市内のモール内にコーヒーショップを運営している。ショップには募金箱も置かれ、売り上げの一部は手術費用やセンターに還元される。店に訪れた人はコーヒーやスイーツを楽しむだけでなく、店員として働く帰還兵と接することができる。

 滞在中、頻繁にスマートフォンにインストールしたミサイル・ドローンの飛来警報アプリからお知らせ通知が届き、街には空襲警報が鳴り響いた。深夜から明け方にかけてホテルの窓からは対空砲が撃ち上げられるのが見え、耳をつんざく凄まじい衝撃音でミサイルが近くに着弾したことが分かった。攻撃のあった翌朝、ミサイルが着弾した現場に行くと集合住宅は激しく損壊し、車は焼け焦げてひっくり返り、爆風で家の窓ガラスが吹き飛ばされた近隣の住民が呆然としていた。

 街中で暮らすウクライナ国民も「戦争」や「攻撃」が日常と化している状況だが、戦地や兵隊のことは深くは知らない。ショップでの帰還兵とのやり取りで知るきっかけとなり、また帰還兵も接客を通して社会との繋がりを持ち、日常生活復帰への第一歩になることが期待されている。

リハビリ中の負傷兵と一般人の交流も重要だ

 帰還した負傷兵が以前のように五体満足に日常を過ごすことは不可能だが、最先端の技術と周囲のサポートで限りなく健常者に近い状態で社会に復帰することは可能だろう。長引く戦争がウクライナの人々に暗い影を落とし続ける中で、過酷な運命を受け入れ、再起しようと奮闘する彼らの姿は一筋の光明となるだろう。そして将来、終戦を迎えた時、国を建て直すために彼らの愛国心が再び必要とされる日が来るに違いない。

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