2025年12月5日(金)

WEDGE REPORT

2025年9月18日

 ロシアによるウクライナへの侵攻から3年半が経過しているが、和平への道筋はいまだ示されていない。ウクライナは一部の領地を占領され、兵力で上回るロシアに対して苦しい戦いが続く。

戦地で手足を失った負傷兵が再起を求めリハビリしている(筆者撮影、以下同)

 それでも、ウクライナは戦う気持ちを持ち続けている。それは、最前線にいるウクライナ兵だけではない。手や足を失った負傷兵たちも「復帰してまた前線に戻りたい」と口をそろえる。6月末から7月中旬までウクライナを訪れた際に、見聞きしたリハビリセンターの現状を報告する。

最先端技術による社会復帰

 首都キーウにあるリハビリセンター「TYTANOVI」。室内は明るく開放的で、エアロバイクやランニングマシーンなどの最新のトレーニング機器が並び、お洒落なジムのようだ。

リハビリセンターには豪華な設備が整う

 歩行の訓練、繰り返し物を移動させる作業、体におもりを付けて負荷をかけるトレーニングなど、たくさんの人がリハビリに取り組む。彼らに共通していることは、戦闘での負傷により四肢のいずれかが欠けていることだ。

 アメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が6月に発表したウクライナの死傷者は推計40万人、死者は最大で10万人に上る。負傷者の多くは祖国を守るために戦闘に参加した兵士たちで、帰還した負傷兵の社会復帰は喫緊の課題となっている。戦時下の国家から支給される恩給は十分とは言えず、行き場の無い帰還兵が増えることも懸念されている。

 広報担当のリサさんによると、およそ500平方メートルの敷地に建てられたこの施設は、負傷した帰還兵が社会復帰を目指すために民間の基金で設立され、寄付や慈善家からの資金提供で運営されている。一人ひとりの症状に合わせたプログラム(リハビリ・トレーニング)を理学療法士の管理の下に実施し、1日およそ50人を受け入れる。昨年7月のオープン以来既に500人がプログラムに参加したという。リハビリスペースの他に義足や義手を製作するラボや瞑想室、キッチンなども併設されている。


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