その設計開発の中核に、謎の〝つくりびと〟、内田さんがいるというわけだ。
ロボコンに熱中した学生時代
「仮説」と「実証」の繰り返し
内田さんは、小さい頃から木工が好きだった。親にねだる誕生日プレゼントが、一風変わっていた。
「誕生日にはノミとかカンナとか工具箱なんかをおねだりしていました。将来は大工になって、自分で設計した建物をたてるのが夢でしたね」
ところが、テレビで高専ロボコンを見たことが内田さんの志向を急変させる。ロボコンがやりたくてたまらず、一直線に高専を目指した。
「高専時代は、シーズンになるとロボコン一色でした。僕は設計者だったので授業中に図面を描いて、寮の消灯時間まで製作に没頭しました」
10年、2年生の時に全国大会出場を果たした。課題は、二足歩行ロボットに人間が乗った台車を牽引させて速さを競うというもの。内田さんが考案した二足歩行の仕組みに、すでに内田イズムが兆していた。
「二足歩行ロボットが難しいのは、一方の足を浮かせたとき、そちら側に傾いてしまうことなんです」
傾きを防ぐには、本体と足を動かす機構の間に隙間が生じないよう「ガチガチに固める」のが一般的。しかし内田さんは、それが嫌だった。
「お金をかけていい部品や材料を使えば何だってできてしまいますが、それじゃあ面白くないんです」
内田イズムによれば、設計とはこうやったらうまくいくかもしれないという「仮説」であり、実際に出来上がったものが仮説の「実証」だ。
「つまり『これを使えば絶対にできる』というのは、仮説ではないんです。実証して問題があったら、トライ&エラーを繰り返せばいい。それがものづくりの面白さなんですよ」
内田さんにとって浜野製作所とは、おそらく大企業では味わうことのできない、「面白いものづくり」ができるフィールドなのだろう。
件のロボコンでは、本体と足を動かす機構の間に丸物(パイプ)を噛ませ、グリスで潤滑することで難題をクリアした。簡単な仕組みで滑らかな動きを実現すると、以降、多くの高専が真似をするようになった。
