習近平の過去10年間の外交政策は「中華民族の偉大な復興」という計画に基づいており、それは「屈辱の百年」の残した負の遺産からの脱却を図ることにある。台湾への支配の回復がその中心的な部分である。一方、中国領土の大きな部分がロシアへ併合されたことも重要な過去の負の遺産である。
とはいえ、中国の指導層は、少なくとも今の段階では、過去にとらわれることを求めてはない。「われわれ、今は過去ではなく将来に眼を向けたいと思う。国全体が、ロシアと中国との協力を進めようとしている」中国グローバリゼーション研究所の高志凱(Gao Zhikai)副所長はそう語る。
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ロシア・ウクライナでは多様な意見を許容
この解説記事のタイトルは‘China Shows Unity With Russia and North Korea, but Divisions Linger’で、中国のロシア、北朝鮮との関係を扱う形となっているが、中身はほとんどロシアとの関係に当てられており、中露の結束がどれほど強固なものなのか、利害の相反がどの程度あるのかを問う内容となっている。
この解説記事中、興味深いのは、政治問題への討議が厳しく管理・制限されている中国においても、ロシアとウクライナにおける戦争については、多様な意見が許容されているという点である。昨年4月、北京大学の馮宇軍教授がロシアの敗北を予測する論説をEconomist誌に寄稿した事例もあった。
中国当局がこのように多様な意見を許容する姿勢をとっていることは、中国の有識者コミュニティにおいて、ロシア・ウクライナ戦争や、中露関係についての見解が実際に分かれていること、中国当局としては、それを当局の公式ラインに揃えさせることが必要不可欠とまでは考えていないことを意味する。
現に、この解説記事で引用されている中国の国際政治分野の有識者の中露関係についての見解は分かれている。一つのグループは、中露両国の利害関係が概ね一致していることを強調しており(趙通と王棟、の高志凱)、もう一つのグループは、中露両国の利害の相違を指摘している(唐暁陽、呉心伯、時殷弘)。
