ウォールストリート・ジャーナル紙は、9月7日付けで、中国のロシア、北朝鮮との関係について中国の著名な国際政治分野の有識者に取材した結果をまとめた解説記事を掲載している。概要は次の通り。
中国のロシア、北朝鮮との関係は、緊密化しつつあるが、ユーラシア大陸に意思を押しつけるような軍事的・政治的な同盟関係にはほど遠い。「中国は、これら2カ国と協働するに際しては非常に慎重である。戦争、安全保障に関する中国の見方は、ロシア、北朝鮮とは大きく異なっている。中国は、40年以上、戦争をしたことはなく、国境における安定を望んでいる」と清華大学国際関係学部の唐暁陽(Tang Xiaoyang)学部長は述べる。
一方、中国と、ロシア・北朝鮮との考えの相違は縮小しつつあるようだ。「中国は、いわゆる『動乱の枢軸』の一部とみられることを気にしなくなっている。米中間の競争の激化により、中国は、周りに仲間を集められることを示したいと望んでいる」と清華カーネギーグローバル政策センターの趙通(Tong Zhao)氏は指摘する。
「中国とロシアは、新たな国際秩序がどのように機能すべきかについて見方がほぼ一致している。両国は、米国の覇権は終わりつつあると考えている」と北京大学国際関係学院の王棟(Wang Dong)教授は述べる。
ところが、復旦大学の呉心伯(Wu Xinbo)教授は次のように述べる。「中露関係にも限界がある。どちらも、もう一方の国が大規模な紛争の当事国となった場合にも、自国はそれに巻き込まれたくないと考えている。仮に中国が台湾を巡って米国と大規模な紛争となったとしても、自分は、ロシアが中国の救援に来るとは思わない」
中国では、社会が厳しく監視されており、政治問題について討議することは多くの場合認められていないが、ロシアとウクライナにおける戦争については、多様な意見が許容されており、著名な学者の中には、ウクライナの抵抗を支援する者もいる。
中国当局は、ロシアがウクライナの戦争で敗れることは、中国の利益に反することだとの立場を取っている。一方、中国にとって、ロシアがウクライナで勝利を収めて、ウクライナを属国とし、ウクライナを越えて欧州での勢力圏を拡大することが自国にとって良いことなのかは明確ではない。「ロシアが戦争で勝てば、中国経済への依存度が下がり、ロシアにとって米国への接近の機会が訪れる」と、中国人民大学の時殷弘(Shi Yinhong)教授は指摘する。
