前者のグループにおける中露の利害関係の一致の根拠は、米国に対する対抗であり、後者のグループにおける中露の利害関係の相違の背景は、紛争に巻き込まれるリスク、米露接近の可能性、領土問題である。
中露の利害は基本、一致
このように因数分解をしてみると、中露間に「対立の火種も見られる」(この解説記事の見出し)ことを大げさに取り上げるべきでないことも理解できるだろう。中露は長い国境を接している隣国同士であるので、利害関係の相違があるのは当然である。問題は、それが表に出てくるかどうかである。
矛盾はあらゆるものに存在するが、矛盾には優劣があり、どの矛盾を重視すべきかを考えることが重要だというのが、毛沢東の「矛盾論」以来の中国共産党の考え方である。当面、米国との対立・対抗が重要な局面においては、中露両国の利害関係の一致の方が重視されると見るべきであろう。
一方、中国は、ロシア・ウクライナ戦争において、ロシアに好意的であるものの、独自の立場を維持している。それは、中国として、米国との関係を含めて自国が動きうる余地を確保するために重要なことである。
そうした観点があるからこそ、ロシアとウクライナにおける戦争について、多様な意見が許容されていると見ることができる。
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