2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月24日

 2025年9月4日付フィナンシャル・タイムズ紙は、8月31日~9月1日に天津で行われた上海協力機構(SCO)首脳会議と9月3日に北京で行われた軍事パレードを踏まえ、グローバル・ガバナンスは改革を必要とするが、それを主導するのは中国の役割ではないと指摘する社説を掲載している。

(ロイター/アフロ)

 この一週間に、習近平は、SCO首脳会議と1945年の日本の敗北を記念する行事を開催した。これらは、中国の増大する国力と世界秩序再構築の野心を示すものだ。

 習は、天安門の演説で、中国の復興は「止めることのできない」ものだと宣言し、人類が「平和か戦争か」の重大な選択に直面していると警告した。習の左右には、ロシアのプーチンと北朝鮮の金正恩が並んだ。

 習は、中国を、第二次世界大戦で日本を屈服させた中心的なプレーヤーであると共に、気まぐれなトランプによって脅かされている国際組織や法、自由貿易に基づく戦後の秩序の守り手として示そうとした。SCO首脳会議において、習は、「グローバル・ガバナンス・イニシアティブ」を提唱したが、これは、「主権の平等」「国際的な法の支配」「多国間主義」等の原則に基礎を置くものであるとした。習は、グローバル・ガバナンスの改革を通じて、人類に対してさらなる恩恵をもたらしたいと述べた。

 しかし、習のアピールは目くらましに過ぎない。習は、他国の主権への尊重と人類の進歩へのコミットメントを語るが、実際は、ウクライナへの野蛮な侵攻を行うプーチンや三代目の独裁者でありロシアの戦争を助けている金正恩と連帯しているのである。

 中国は自らの利益が脅かされていると感ずれば、他国の内政に干渉する。国際組織についても、中国はそれらを支配しようとする。自由貿易と言いつつ、自ら戦略的と考える部門には、高い壁を維持している。

 習は、国際秩序がより「多極」に近づくことを支持すると言うが、要は、強国は自国が好きに振る舞うことができる勢力圏を切り出すことができる世界を望んでいるということだ。これは、トランプが考えている世界ともそう違わない。

 もっとも、習は、米国の国力は衰えるのに対し、中国の影響力は拡大すると見ている。が、中国の軍事力は、戦闘経験の欠如と上級司令官のパージのため、9月3日の軍事パレードが示唆するほど強大ではないかもしれない。


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