2025年12月5日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年10月1日

 人々は、政治とカネには関心を持つが、もっと関心を持つのは自分のカネ、つまり賃金や手取り、雇用なのだろう。外国人問題については、どの候補も既存の法令を守らせ、必要であれば新しい法律を作るなどと言っている。

 政策については、どの候補も似ているという評価がある。それは、自民党が少数与党であることが影響している。

 国会で首相に選出されるためには野党の支持が必要である。ただし、野党は右から左までバラバラなので、野党が結集して自民党を野党に追い落とすことは考えられない。そこで、野党の主張のうち、自民党内で絶対に反対とならない政策を取り入れなければならない。それを入れれば当然どの候補の主張も似てくる。特にイデオロギーの対立が小さい経済政策ではそうなる。では、何を議論すれば良いのか。

「手取りを増やす」は政府がどこで国民からお金を取るか

 「手取りを増やす」は分かりやすいが、給料を渡す前に税金や社会保険料を天引きされるのも、給料をもらってから消費の度に消費税で取られるのも、違いがないと筆者は思う。そこで、消費税減税、社会保険料引き下げ(社会保険料も税である)、所得税減税、ガソリン・軽油減税(暫定税率廃止)、給付金のどれが良いかを横並びで考えよう。

 消費税減税はすべての人への減税になるが、社会保険料引き下げは働く人への減税となる。これは決定的な違いだと思うので、是非議論していただきたいと思ったが、消費税減税論議は消えてしまった。一説によると、自民党の重鎮方には、大変な苦労をして消費税を導入し、それを引き上げたのに、軽々に下げるなんてとんでもないという方が多いからだという。

 また、それだけ苦労して得た税収だから、消費税は自民党の財布だという方もおられるらしい。所得税減税は、課税最低限を引き上げるという程度のことが議論されている。

 様々な思惑が錯綜する中で、給付付き税額控除が浮かび上がった。所得が少なく、減税の恩恵にあずかれない人に給付付きの減税を行おうというものだ。これはミルトン・フリードマンが提唱した負の所得税や、ベーシックインカムにも通じる考えなので、賛成だが(筆者には『ベーシックインカム』中公新書、2015年、という著書もある)、実務を考えると、所得に応じて給付額を決めるのは様々な対応や手続きが必要で、いつ実現されるか分からないとも言える。

 国民への一律の給付金は、給付付き税額控除とそう大きくは変わらないと筆者は思うが、これはバラマキだと人々の評判は良くないらしい。

 「手取りを増やす」をどのような手法でやるのかが議論の一つとなっているのだ。


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