自民党が総裁選を、前総裁の任期途中では珍しいフルスペック型を選んだ。国会議員と都道府県の代表だけではなく、党員投票を通じて党首を選ぶということだ。国民の声を汲もうとしていることをアピールしているのかもしれないが、自民党員は自民党を支持する人やそうした団体の関係者であり、国民の平均を代表しているとは言えない。
また、自民党が「解党的出直し」と言っているのに、党改革として何をするのか見えてこない。自民党が少数与党となった参院選の敗北を総括していたにもかかわらず、それを生かした争点の設定にもなっていない。党員だけではなく、「民意」を汲んだ出直しとするためには、どのような政策と議論が必要なのだろうか。
自民党の敗北総括が争点になっていない
自民党は自ら、参院選敗北の総括を行い、主な敗因として「自民党支持層を固めきれなかった」「無党派層への訴求力不足」「若年層・現役世代と一部保守層の流出」「経済や暮らしの厳しい現状に寄り添えず、物価高対策も国民に刺さらなかった」「政治資金問題を巡る信頼の喪失」「党の発信力が弱く、デジタル対応においても遅れを取った」ことなどを挙げている。再生に向けた改善策として、「保守の思想を体現する党として国民に存在意義を示し、解党的出直しに取り組む」としている(「第27回参議院議員通常選挙総括委員会 報告書」自民党2025年9月2日)。
ところが、「総括」と総裁選の論争があまりマッチしていないように思える。2022年と25年の参院選の比例得票数を比較すると、自民党が1820万票から540万票減らして1280万票に、立憲民主党は677万票から62万票増やして739万票へ、国民民主党は362万票から400万票増やして762万票へ、維新は785万票から347万票減らして438万票へ、参政党は126万票から616万票増やして742万票になった。公明党、れいわ新撰組、共産党、民主党もあるが、自民党からこれらの党に移ることもあまり考えられない。
維新は伸びていないので、自民党から国民、参政党に票が移動したと考えるべきだろう。参政党は「日本人ファースト」、国民は「手取りを増やす」というスローガンが国民に刺さったのだろう。
票の移動と敗北総括から考えれば、外国人問題、手取りを含めた経済問題がもっと具体的に議論されても良いのではないか。また、「解党的出直し」という割には、党改革として何をするかは分からないままである。政治とカネが争点になっているとは思えない。
